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Delerium - Syrophenikan

Syrophenikan

Syrophenikan

Front Line Assembly(以下FLA)のビル・リーヴとライズ・フルバーによるユニットの3rd。
このユニットは本家のFLAよりも知名度が高くて、あるアルバムなんかは数百万枚もの売り上げを記録してる。なので知ってる人(主にトランス・ヘッズ)は多いだろうが、このアルバムはその知ってる人でも、聴いたことがないような内容。
FLAはスキニー・パピーに居たビル・リーヴが結成したエレボディ系のバンド。初期はキャバレー・ヴォルテールポーション・コントロールを思い起こさせるようなひんやりとした色調のボディだったが、その後はインダストリアル・メタルなどを取り入れて独自の方向性を得ている。
このDeleriumはFLAが結成された後に結成されたユニットだったが、1stの発表が1988年なのでFLA立ち上げ直後といった感じか。1stは実験的なダーク・アンビエントSPKの3rdやルストモード、ソヴィエト・フランスを思い起こさせた。
このアルバムもその路線だが、よりメロディアスによりトライバルなビートにインダストリアルなビートも強調されている。それは同時期のムスリムガーゼやエスプレンドー・ジオメトリコを思い起こさせる、インダストリアル・エスノだが、ムスリムガーゼのような中東的なメロディは聴こえてこない。似ているのはテスト・デプトの「Terra Firma」、「Materia Prima」だろうか、ケルト音楽にメタル・ジャンクを融合させた訳の分からない音だったが、このDeleriumの「Syrophenikan」に似ている。そこによりトランシーさを加えた……と評すれば適当なのかもしれない。
そう聴くと、ベルギーのEBM系レーベル「KK」から出ていた、Psychick Warriors Ov Gaiaの音源に一番近いのかもしれない。そのトライバルでトランシーな音は後のゴア、サイケデリック・トランスに繋がってくる音だったが、このDeleriumの3rdも同じ系統だ。
トライバル・トランスの萌芽がここに……。次のアルバム「Stone Tower」ともに初期Deleriumの傑作。ゴア、サイトランスを聴く向きもルーツの一つとして聴いてみるのもいいだろう。

KMFDM - Symbols

Symbols

Symbols

ドイツのインダストリアル・メタル系バンドの9th。
四枚目の「Naïve」からメタル・ギターを全面的に取り入れて所謂「インダストリアル・メタル」ないし「インダストリアル・ロック」としてミニストリーナイン・インチ・ネイルズらと共に注目されるようになり、その路線は以後も続いていくのだけど、その路線は7枚目の「Nihil」で頂点を迎えたように自分には聴こえる。その次のアルバム「Xtort」ではデジタル・ハードコアばりの高速ブレイクビーツを取り入れたりして、明らかにインダストリアル・ロックから脱却しているように思えた。
このアルバムはその「Xtort」で魅せた実験的な方向をより推し進めたアルバムだろう。全編に亘り野太いエレクトロニック・ビートにアシッドなデジタル・リフ。特にデジタル・リフはTB-303の多用が目立ち、当時台頭していたアシッド・トランスやデジタル・ロックの影響が見て取れるような鳴り方で面白い。またスキニー・パピーから二ヴェック・オーガ、PIGのレイモンド・ワッツなどが参加し、豪華な布陣も魅せている。
しかし、デジタル・ロックのそれにはならないのはやはり「Wax Trax!」出身。圧倒的にエレボディしてしまう。(1990年代後半の)プロディジーとディー・クルップス、リヴォルティング・コックスの間を何で埋めたらいいのかと訊かれたなら、迷わずこのアルバムを挙げるだろう。お薦めの一枚。

KMFDM - Rocks (Milestones Reloaded)

ROCKS-MILESTONES RELOA

ROCKS-MILESTONES RELOA

ドイツのインダストリアル・メタル系バンドの再録、リミックスを集めたベスト盤的コンピレーションCDに30周年記念ライヴの模様を収録したDVDが付いたもの。
1980年代後半の所謂「エレクトロニック・ボディ・ミュージック」の隆盛とそのシーンを作った米国のレーベル「Wax Trax!」から出していたことからその一派として扱われるも、微妙な評価だった。しかし、1988年にミニストリーが「インダストリアル・メタル」を確立させ始めた頃から、このKMFDMもその時流に乗り、徐々に評価を上げていった。挙句、チャートにも顔を出すほどの存在に成り上がった。
しかし、KMFDMがミニストリーらのインダストリアル・メタルと違っているのは、やはりエレボディだろう。ディー・クルップスと同じく、重たいエレクトロニック・ハンマービートにスラッシュ・ギターを乗せることで成り立っている。ノイジーなスラッシュ・メタルのミニストリーとは趣が全く異なっている。その点で未だに「Wax Trax!」色を残している稀有なバンドなのかもしれない。特にここ数作はエレボディ回帰が著しく、直線的なハンマービートにびりびりとしたシンセ・ベースが強調されている。
このベスト盤もその路線が多くを占める。まぁ近作の曲が多く収録されているのでしょうがないが……。再録またはリミックスも(A Drug Against Warを除いて)デジタル・リフを前面に推しだした音に仕上がっており、1990年代前半のスラッシュ・メタルを求める向きにはお薦め出来ない内容。
最近のディー・クルップスとともにハードロックなシーケンスを持った古き良き「エレクトロニック・ボディ・ミュージック」を聴かせてくれる。と同時に最近のブロステップ、ロッキンなエレクトロをも取り入れている好盤。

Xao Seffcheque – Sehr Gut Kommt Sehr Gut

Ja,Nein,Vielleicht kommt sehr gut

Ja,Nein,Vielleicht kommt sehr gut

オーストリア出身のアーティストによる1st。オリジナルは1981年発表。デジタル・リマスター盤ですね。
半裸の渋い、イイ顔したおっさんがギターを持って煙草をふかしている……。そんなジャケから想像する音はブルースやフォークだろう。
しかし、そんなイマジンを上条パイセンの如くブレイクしてくれるのがこのアルバム。どうやらディー・クルップス、アインシュテュルツェンデ・ノイバウテンらを輩出したレーベル「ZickZack」からもこのおっさんは出してたようで、そんな「あっ……」と呟いてしまうようなお察しが産まれてしまう狂気のジャーマン・ニューウエィヴサウンドが満載の一枚。
その朴訥とした狂気はデア・プランのヴィジュアルイメージや音に近いが、半裸の渋いジャケが物語るようにエレボディ色が濃いい。ガビ・デルガドのソロ・アルバム「Mistress」はレザーを脱ぎ捨てて、アロハシャツのガビが写っているジャケが印象的なようにトロピカル・サウンドが全編に亘って流れていたが、硬くアシッドな音は健在だったように自分には聴こえた。
このアルバムはそのガビのソロ「Mistress」から南国的なイメージを抜いて、よりアシッドな音を追求したような……といえば伝わってくるかもしれない。
DAFとガビのソロ「Mistress」の間にある欠けたピースを埋める様な音楽。全く製作者にサイコ・ダイヴをしたくなるような狂気のみのアルバム。クソお薦め。

Hunting Lodge - 8-Ball

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アメリカのインダストリアル系バンドの5th。
初期はSPKのグレアム・レヴェル主宰のレーベル「サイド・エフェクツ」から出してたりもしてたので、やはりハードでハーシュなノイズ・インダストリアルだった。
しかし、このアルバムはノイズというよりもパンク!以前の彼らからは想像も出来ないギター、ベースのバンドサウンドが聴こえてくるので最初は同名異バンドかと思ったほど。でもノイズ上がり、そこは他に聴こえてこないインダストリアルな音像も魅せてくれる。
ここで当時の米国のシーンを(にわかなりに)見てみると、印象的なのはUハードコア、ジャンク勢だろうか。スティーヴ・アルビニがフロントマンを務める〇イプマン、ビッグ・ブラック、ミッシング・ファウンデーション、コップ・ショット・コップ、そしてそれらのバンドの原点となっているスワンズ。他にも色々なバンドが(当時)居たそうだが、冒頭にも書いた通りにわかなので勘弁して欲しい。
このアルバムは先に挙げたジャンクに近く、最も近いのがコップ・ショット・コップだろうか。この所謂ジャンクはハードコア色が強いものの、メタル・パーカッションやサンプリングを多用しており、当時隆盛しつつあったビート系のインダストリアル、つまるところエレクトロニック・ボディ・ミュージックに近い……というより従妹みたいなものか。しかし、前述したようにEBMよりはUSハードコア色が濃厚な点が異なる。
スワンズは置いて、コップ・ショット・コップ、ミッシング・ファウンデーションはUSハードコアとノイバウテンが合体したような音でUSハードコアの暴力性とメタル・ジャンクの融合が見事に花開いている。そんな魅力的な音楽にSPKのレーベルから出していた輩が喰いつかないわけがなく、このアルバムが産まれた。
ジャンク、ハードコア・パンク!な一枚。爆音で流しながら発散するのには最適な音楽。お薦め。

Plastic Noise Experience - Neural Transmission

Neural Transmission

Neural Transmission

ドイツのエレクトロ・インダストリアル/EBMアーティストの1stにEPを足した編集盤。
クラフトワークがエレボやインダストリアルを演っていたらこういうのを奏でていたのかも?って感じの音。初期のフロント242やクリニックなんかもクラフトワーク的な音像だったけど、このアーティストはコピーするだけではなく上手い具合にエレボにすることに成功している。
クラフトワークといえば元祖「テクノ・ポップ」みたいな扱いだけど、1970年代後半から1980年代の音源を聴くと、とてもトランシーな音を奏でていることに気が付くだろう。それは酩酊感や叙情的なものを出てきたばかりのテクノロジーを駆使して表わすことに成功しているという恐るべき集団だったクラフトワーク。兎角、テクノ・ポップ方面で語られてしまうがクラフトワークこそ初期のトランスの萌芽だったと自分は思ってしまう。
このアーティストはそのトランスにハードロッキンなエレボを注入しており、それが今までのバンドやユニットが聴かせることが出来なかったレベルを魅せてくれる。このコンピを聴くと冒頭に書いた通りクラフトワークがエレボを演っているのが実体を帯びてくる。
フロント242もクラフトワークを目指していたけど、水で薄める様なことしか出来なかったため(自分の個人的な考察……もとい妄想です。悪しからず)にスタイルを変更したが、そのスタイルで成功を物にした。しかし、このアーティストはフロント242が物にすることを出来なかったスタイルでものの見事に成功を手に入れている。げき恐ろしきクラフトワーク的エレボ。ちょうお薦め!見つけたら即買い。マスト・バイ!

V.A. - Body Rapture II

Deine Lakaien, Les Berrtas, Solar Enemy, Die Krupps, Schnitt Acht..

Deine Lakaien, Les Berrtas, Solar Enemy, Die Krupps, Schnitt Acht..

ドイツのハンブルグを拠点とするEBM、インダストリアル系レーベルのコンピレーションアルバムの第二弾。
このレーベルは1980年代後半には所謂「ベルジャン・ニュービート」と呼ばれているジャンルを1980年代後半、ドイツやベルギーに雨後の竹の子のように存在していたレーベルと同じく出していた。その後1990年代に入ると多くの「ニュービート」レーベルはトランスやテクノのレーベルへと移行するの(主なレーベルはケン・イシイも居たベルギーのR&S)だけど、このZoth Ommogだけはインダストリアル、メタル的なヘヴィネスさを増してEBMや1990年代のインダストリアル(メタル)へと移行……というより留まった。
このコンピは1992年発表なのでちょうどその転換期のようなものだろう。欧州にトランスの風が吹こうとも、エレボでいることが出来てしまう時代錯誤な連中の音を存分に聴ける。
しかしながら、(これは以前にも書いたが)1990年代のエレボはトランスと区別がつきにくく、特に吠える様なヴォーカルが無ければサイケデリック・トランスやゴシックな雰囲気があるジャーマン・トランスまであと一歩な音で確実に進化しており、1980年代後半のそれとは大きく異なっている。
そう!このトランスこそが1990年代のエレボの特徴だろう。当時隆盛していたトランス及びジャーマン・トランスは欧州の西側を飛び越えて東独……旧共産圏の国(旧ユーゴのクロアチアスロベニア。そしてポーランドやトルコまで)、UK、日本まで届いて人気を博していた。アンダーワールド、オービタル、レフトフィールドなんかの英国のプログレッシヴ・トランスはポップスチャートの上位に来るほどまでに売れていたのはご存じだろう。
トランスはシカゴのアシッド・ハウスが欧州に亘ってエレボと結びつくことで「ニュービート」となりそれが更に進化していったジャンルだ(アシッド・ハウスの欧州的な解釈とも呼べる)。だからトランスの原点の一つとしてエレボがあるのだけど、オービタルを聴いてもそれを感じることは出来ないだろう。しかし、ジャーマン・トランスの一部、サイケデリック・トランスの一部にはエレボを感じることが出来る。そういうことから1990年代のエレボはサイケデリック・トランスの前段階、つまりプレサイケトランスを指し示すことでそのジャンルと(少しだけ)交わりながらも独自の路線を歩むことで健在していたのだろう。
ビート・インダストリアル、エレクトロニック・ボディ・ミュージックサイケデリック・トランスが交差するとき……。ちょうお薦め。買え!以上。