Psychick Warriors Ov Gaia - Ov Biospheres And Sacred Grooves: A Document Ov New Edge Folk Classics

Ov Biospheres & Sacred Grooves

Ov Biospheres & Sacred Grooves

オランダのトライバル系テクノユニットの2nd。
このアルバムを出したKKレコーズなるレーベルはInsekt、 Kode IV、Front Line Assembly、Vomito Negro、Cat Rapes Dog、そして日本の2nd Communicationという錚々たる面子のEBMを出していたベルギーその筋。
今までも何回かこのブログでEBMとその派生であるニュービートがトランスの原点だと書いた。で、それは後のサイケデリック・トランス、ゴア・トランスの流れにもなったとも書いた。そして本エントリで紹介する盤は後者のサイケデリック・トランス、ゴアに組するものだ。
このアルバムは一聴きすると、1990年代半ば、または後半に出たものだろうと感じるだろうが、1992年発表のアルバム。しかもレーベルはボディ系。全きオーパーツみたいな音だが、1980年代半ばには既にジュノ・リアクターのベンワトキンスやキリング・ジョークのユースらがまだまだチープではあったが試みていたことで、もしかしたらこのユニットもそれに影響されたものなのかもしれない。あとはムスリムガーゼやホルガー・シューカイのソロにも似たような中近東的なリズムやメロディも感じられる。
このPsychick Warriors Ov Gaiaに限らず、後のゴア、サイトランスに影響を与えている音は様々なエレボ系レーベルで聴くことが出来たりするので、興味を持たれた向きは1980年代末期から1990年代初頭のその筋から出ているコンピ(タイトルに「テクノ」という言葉が入っているものが当たり)を聴いてみると面白いかもしれない。

Dessau - Details Sketchy

Details Sketchy

Details Sketchy

アメリカのインダストリアル系ロックバンドの2nd。
1stはミニストリーからアル、ベイカーがジョイ・ディヴィジョンのカバー曲で参加するのみだったが、今作はポール・ベイカーが作曲&Pちゃんとして数曲も参加。またディー・ワルツォーの面子も数曲参加。
前作はキリング・ジョーク的な暗黒舞踏が前面に亘って展開しているという素晴らしきアルバムだった。しかし、今作はその暗黒舞踏にトランシーなデジタル・リフが合わさるというウルトラ傑作に仕上がっている。
キリング・ジョーク的な暗黒舞踏と前述したが、元々この人達はEBM系の音、ニッツアー・エブや初期のミニストリーに影響を受けているせいか、直線的で疾走感もある。そして、本作はその持ち味を活かしながらのトランスっぽいデジタル・リフを加味している。ミニストリーのポール・ベイカーが書いている冒頭からしTB-303のアシッドベースが暗黒舞踏に絡むという圧倒的な音を魅せる。これは「脱インダストリアル宣言」でノイズやデジタルリフを排して純粋なメタルやハード・ロックに向かってしまったミニストリーにベイカーは何かを感じることがあったのだろうか。その後も激アシッドな呪術舞踏が続きつつ、アーシーかつダビーな4、5曲が良いアクセントになっている。
この2ndアルバムは、彼らの最高傑作ではないだろうか。ナイン・インチ・ネイルズ、KMFDMとも全く異なるインダストリアル・ロックが此処に……。要チェックやで!

Information Society – Don't Be Afraid

Don't Be Afraid

Don't Be Afraid

アメリカのシンセ・ポップバンドの5th。
この人達はアフリカ・バンバーターがいたエレクトロ後にヒップホップ系のレーベルTommy Boyから音源をリリースしていたのだけど、(その時代の音を聴くと)1980年代も半ばなのに音もヴィジュアルもニューロマンティックス的で残党……というより遅れてきたニューロマって感じですね。しかし、このTommy Boyは面白いレーベルで英国のブリープ・テクノのLFO、これまたUKアシッド・ハウスの808 Stateの音源をライセンスリリースしてたりする。このInformation Societyもその枠だったのではないかと思われる。
で、話を本アルバムに移すと、インダストリアル・ロック!しかも、レーベルをあのクレオパトラに移しての一作目。やっぱりNINの猛威にやられたのでしょうかね。なので思いっきりNINの1stやんけ!という趣ですが、そこはニューロマ的なエレクトロ・ポップスを演っていたバンド、耽美でゴシックです。クラシックス・ヌーヴォーがNIN的な音を目指したらこうなるかも。尚、Hate Dept、The Damage ManualのメンバーSeiboldが参加しているようで、その音に一役も二役も貢献していることは間違いない。
特にディー・クルップスの影響も感じられるスリリングな5曲目が白眉。他もニューロマ感じるインダスロックが妙な味を醸し出していて面白い。やっぱり出自には抗えないね。ブックオフ等の中古盤屋で見つけたら即購入しよう!

Kill Switch...Klick - Degenerate

Degenerate

Degenerate

アメリカのインダストリアル・ロックバンドの2nd。
ナイン・インチ・ネイルズの大成功により所謂「インダストリアル・ロック」が米国を中心として席巻していた1990年代前半から半ば。なので柳の下の泥鰌を狙うつまらない量産型のインダストリアル・ロックが出ていたのもこの時代で、(NINと同じく先行者のKMFDMを除いて)買う時は割と試聴が必要だったりするけど、このバンド……というよりこのクレオパトラレコーズのそれはかなり高品質。
インダストリアル・ロックといってもこのアルバムはかなりEBM系の流れを汲む音で、Wax Trax!のシスター・マシーン・ガンやリヴォルティング・コックスに近い。要所、要所にメタル・パーカッションをいれてくるなどしてきて、その音像はエレボ寄り。二曲目なんかはニッツアー・エブっぽくて面白い。フロント242風のサイバー・パンクなジャケも肯ける。
NINを期待すると肩透かしを喰らうアルバムだが、(ボディ期の)KMFDM、フロント242、リヴォルティング・コックス、ニッツアー・エブが好きな向きは買って損無。なお、クレオパトラはこのバンド以外にもVoice Of Destruction、Blok 57、Spahn Ranch、The Electric Hellfire Clubなどなど前述したEBMの流れを汲むインダストリアル・ロックが多く、マジで要チェックやで。

Skullflower - Form Destroyer

Kino II: Form Destroyer

Kino II: Form Destroyer

Pure、Totalといったハーシュでハードコアなノイズ・インダストリアルを作っていたMatthew Bowerを中心としたインダストリアル系ロックバンドの1st。なお、このアルバムにはラムレーのGary Mundyが参加している。
端的に表すとノイズ・ロック。この時期(1980年代後半)の所謂「ジャンク」と呼ばれていたバンド達の影響が見れるけど、この圧倒的なだらしない感じはどういうことなのだろう?って趣。こいつら全員、アルコールとかアシッドとか入れて録音してるだろ、という感想しか浮かんでこない。
サイケデリック、アシッドとかのワードも浮かんでくるけど、ヒッピーイズムの対極にある「ヘイト&ウォー」のパンクイズムが多分にあり(それはやっぱりラムレーのメンバーがいるからだろうか)、それを鑑みると「只のだらしなさ」が浮き彫りになって来てヤバい。
酔ったノイバウテン、ゼヴという趣のインダストリアル・ドローン。殺伐さが根にあるが、それを上回るゆるふわなノイズ・ドローンに浸れる好盤。

Tommi Stumpff - Terror II

Terror II [Analog]

Terror II [Analog]

ドイツはデュッセルドルフを拠点として活動していたパンクバンド、 Der KFCのメンバーによるソロアルバム二作目。
DAFリエゾン、ベルフェゴーレなどなど後にEBMの基礎となったジャーマン・ニューウェイヴから諸国ニューウェイヴバンドのPちゃんを担当していたコニー・プランクをこれまたPに迎えて幾つかの音源を出していたのが1980年代初頭。それっきり音沙汰が無かったトミー・シュタンプが1980年代末期になって復活。そしてこのアルバムはその復活一作目。しかしながら、コニー・プランクの名は無い(1987年に他界)。
このアルバムは仕切り直し……というべきもので、過去のフィータスを思い起こさせるキチガイテンションは希薄で、どちらかと言えばライバッハやボルゲイジアにニッツアー・エブを足した様な全体主義を感じる直線的なエレクトロニック・ボディ・ミュージック
当時(1988年)某音楽雑誌がこのアルバムのレビューに「デジタル・ワグナー」と書いたそうだが、前述したようにライバッハを感じる扇情的なオーケストレーションがニッツアー・エブ的なエレクトロ・ボディ・ビートに乗っかる様はそのデジタルなワグナーを喚起せずにはいられないだろう。
当時のEBMシーンに対する返答か?と思わせる様なアルバム。ミニストリー、リヴォルティング・コックス、ニッツアー・エブ、ライバッハ……当時のシーンの役者たちが浮かんでくるのと同時に古のノイエ・ドイチェ・ヴェレも浮かぶ全き稀有なアルバムだろう。お薦め。
ちなみにデジタル・リマスターでアマゾン表記ではLPになってるがCDです。

2017年良かったCD(その2)

続き。順不同。2は今年に限りません。

Brutalsim

Brutalsim

UKのインダストリアル・ロック系バンドのベスト盤。ツイで某人様が上げておられていたの見て買いました。
1990年代に「Metal-Hacking Industrialism」という身震いが来てしまう程素晴らしい座右の銘を持つ「Dynamica」というレーベルがあって、このバンドはそこから出してました。
ディー・クルップス直系の熱きインダストリアル・メタルが満載かつ音質が格段に良くなってて、クソ満足!キェェェェェェーーーーーイッッッッ!!!!
Hell Yeah

Hell Yeah

http://moistly.hatenablog.com/entry/2017/09/23/193640
Ja,Nein,Vielleicht kommt sehr gut [12 inch Analog]

Ja,Nein,Vielleicht kommt sehr gut [12 inch Analog]

http://moistly.hatenablog.com/entry/2017/03/11/194000
Stowaway

Stowaway

UKのテクノ系Pの1st。
1980年代後半のテスト・デプトをハード・テクノまたはミニマルで実践したらこうなった……という感じでしょうかね。
最初から最後まで漢気溢れる、ウルトラ硬派なインダストリアル・テクノ!これを出している「Perc Trax」というレーベルも同じような音を出しているので要チェックやで!
fallondeafears.bandcamp.com
邦人ハーシュ・ノイズ系トラッカーによる同人ゲーム「東方Project」をモチーフとしたアルバム。
その「東方Project」というのは全くの門外漢で「中国人っぽい服装にゴシックをミクスチャーした服装の美少女キャラで怒首領蜂」という認識しか持ち合わせていないのですが、良いアルバムです。
基本的にはハーシュでメタル・ジャンクなのですが、時折挟まってくるゲームっぽいメロディ(これがその「東方Project」なのだろうか)が良いアクセント……というかめちゃくちゃキてて、μ-ziqを思い出しました。
ノイバウテンμ-ziqが共作したらこうなるかも……と思いました。
DINNER FUR 2 [LP] [12 inch Analog]

DINNER FUR 2 [LP] [12 inch Analog]

トミー・シュタンプと同じく所謂NDW。あとデジタル・リマスタ盤。だけどコニー・プランクのソロやクラスター、メビウスの音源を出していたレーベルからとのことなので、同時代のそれとは違う趣がありますね。
端的に表すとレゲエ、ダヴでしょうか。しかも後のベーシック・チャンネルなんかを思い起こさせる硬質で空間系のそれ。一聴きしただけではとてもレゲエには聴こえないのだけど、じわじわダヴがキます。
この時代(1982年)でこういうことを出していた人達が居たことに驚きますが、独語シャウトや反復する硬いシンセ・ベースにDAFの影響や当時既に空間系のレゲエやダヴを作っていた坂本龍一の「B2-Unit」の影響もビシバシ感じます。

今年はホントに新譜を買っていなくて(それどころか旧譜も)書くことないなぁと思ってたのだが、他ブログのベストエントリを読んで、ああ、そういえば少しは買ってたなと思いだし、なんとか書き上げた次第。
想えばガンプラとかアニメのグッズばっかり買ってた一年で音源に割くリソースが不足。それは今でも絶賛継続中なので、このブログの更新頻度は更に減少していくことでしょう!それでは酒でも飲みながらアニメを観るかな!