Arno Steffen - Schlager

シュラーガー(Schlager) [CD:SSZ-3037OD]

シュラーガー(Schlager) [CD:SSZ-3037OD]

ドイツのアーティストによる1st。
1980年代半ば、フェアライトなるサンプリングマシーンの登場により音作りに相当な変化をもたらしたようだ。それはアート・オブ・ノイズを聴くまでもなく……。
このアルバムもそのサンプリング・マシーンをフルに使い……という訳では無く、自作のサンプラーを全面的に使い倒しているそうだ。凄い!……が買う金が無かったのだろうか、フルセットで一億円もしたらしいし。ちなみにあのコニースタジオで使い倒したそうです。勿論、コニー・プランクが全面的にバックアップ。
サンプラーを前面に……といってもアート・オブ・ノイズになっているわけでもなく、コニー・プランクP仕事のDAFやトミー・シュタンプを思い起こさせる、所謂「エレクトロニック・ボディ・ミュージック」に仕上がっている。てか、まんまトミー・シュタンプ。
ノイエ・ドイチェ・ヴェレなスチャラカで素朴なメロディが流れつつも、メタル・パーカッション、硬質なエレクトロニック・ビート、ライバッハを思わせる荘厳で扇情的なオーケストラ、独語シャウトが横溢しており、どうにもEBMを演じてしまうのはコニー・プランクPの所為なのだろうか。またコニーP(のEBM仕事)の繋がりであろうコワルスキーやベルフェゴーレのメンバーも参加。どうりでエレボディになってしまうわけだ。
まだまだ1980年代のノイエ・ドイチェ・ヴェレ系の音源でヤバいのはあるぞ、というが自覚できたアルバム。そんな音源を再発したSuezan Studioには尊敬の念しか覚えない。トミー・シュタンプ好き、フィータスが好きな向きは買って損無!買え!以上!

Skinny Puppy - Bites

Bites

Bites

カナダのインダストリアル系バンドの1st。
暑い……。暑いとどうにも漢滴るEBMおよびインダストリアル・ビート系などを聴く気が起きず、アンビエント、ダヴ、トライバル系のトランスものばかり聴いてしまう。
しかし、このアルバムはEBM系にある暑苦しさが希薄で荒涼としたサウンドが続く。ケヴィン・キーは1980年代前半からのエレクトロを取り入れたキャバレー・ヴォルテール(以下:キャブス)やポーション・コントロール(以下:ポーコン)を演りたくて、スキニー・パピーを始めたそうだから、この初期にあたる本作はそれが濃い。
キャブスでいえば「The Crackdown」から「Micro-Phonies」、ポーコンで言えば1980年代半ばのアルバム群となるだろう。インダストリアルでアヴァンなエレクトロに荒涼としたメロディが乗った「ひんやりとした」質感が印象的。
後のケバケバしいまでのノイズと発狂ディストーションヴォイスは鳴りを潜めているが、キャブス、ポーコンの「ひんやり」感を楽しめるのは初期スキニー・パピーだけ!この夏に最適なインダストリアル・ビートもの!

Muslimgauze - Turkish Berlina

Turkish Berlina

Turkish Berlina

イギリスのアーティスト(故人)によるセルフ・リミックス盤。
……なんだけど、盤のどこにもクレジットが無く、どの曲のリミックスなのかを大手DBサイトにて調べたところ、全ての曲が無題でしたとさ……。だから何の表記も無かったんだね!
一応「Sarin Israel Nes Ziona」と「Jah-Mearab」に入ってた曲のリミックスがあるようだけど、「そんな曲、入ってたっけ?」と思うようなリミックス。かなり彼の音源では異色ではないだろうか(だから発表しなかったのかもしれない)。
いつもの中近東なメロディを乗せたダヴやトライバルビートものなんだけど、ジャングル、IDMテイストな曲もあって面白い。フロア向けがあるかと思うとディープなダヴもあったりして、リミックス盤らしく統一感が無い。特に2曲目のダビーな中東ジャングルはこの人にしか作りえない傑作だ。
この人のアルバムはダヴのアルバムならダヴのみ、フロア向けのアルバムならトライバルか四つ打ちのみに統一させてくることが多いので、このとっ散らかった感じは珍しい。
故人ながら(1999年に死去)、未だ定期的に(未発表やリミックス)リリースがある。もう流石に掘り尽くされたと思うが今後も注目すべきアーティストだろう。500枚限定とのことだが、ユニオン各店、中古盤屋で以外にも簡単に見つかったりする。またiTunesにもあったりするので興味を持たれた向きは検索してみるといいだろう。お薦め。

Leæther Strip - The Rebirth Of Agony

The Rebirth Of Agony

The Rebirth Of Agony

デンマークのエレクトロ・インダストリアル系アーティストの6th。
1990年代のEBM系残党の中ではフロント・ライン・アッセンブリーらと並んで活動が盛んだったアーティストの一人。それなりのセールスも上げていたよう。
しかし、もうこの音はEBMというよりもサイケデリック・トランスと呼ぶべき音像でディストーションヴォイスがなかったならインダストリアルにもならない。 このアーティストが居たレーベル「Zoth Ommog」はその初期、1980年代末期当時ドイツとベルギーにあった多くのエレクトロニック・ダンス系レーベルと同じようにニュービートものを出していたが、このアーティストは見事にそのノリを引き継いでいる。初期Zoth Ommogは他のレーベルとは違い、アシッド・ハウス色が薄く、EBM直系のハードでインダストリアル色が濃かった。そのニュービートのダークかつゴシカルな音は後のジャーマン・トランスやUKトランスにも引き継がれたが、インダストリアルを強く残している点で初期Zoth Ommogのそれだろう。
しかし、内に沈み込んで行きながらハードコアにも突き進んで行く様な音像はサイケデリック・トランスとしか形容できない。このアルバムを聴けば、EBMがゴア、サイケデリック・トランスの源であったことは一目瞭然だ。
初期Zoth Ommog的ニュービートとサイケデリック・トランスが交差するとき……。お薦めの一枚。

Spetsnaz - For Generations To Come

For Generations To Come by Spetsnaz

For Generations To Come by Spetsnaz

ソビエト連邦……もといロシアの特殊部隊……もといスウェーデンEBMデュオの4th。
昨日のエントリでEBMはトランス、インメタ、オルタナに吸収された、と書いたがその後にも(というかその最中にも)ジオンの残党の如くEBMを貫いている連中も少なからずおり、米国ではクレオパトラ、欧州ではZoth Ommog、オフ・ビートらのレーベルが1990年代を亘ってそれら残党を支援した。
しかし、それらのレーベルも2000年を迎えると徐々にフェードアウトしていく。が、折からの1980年代ニューウェイヴ・リバイバルにより、どさくさまぎれといった趣で始まった「オールドスクールEBM」というジャンル名で復活を遂げる。また米国ではメトロポリス、欧州ではアルファ・マトリックスらが前述したレーベルを引き継いでいった。
このSpetsnazはその「どさくさまぎれ」のオールドスクールEBMの先鋒となった二人組である。もろニッツアー・エブ、DAF、初期ディー・クルップスを思わす様なエレクトロ・ハンマービートにうねるシンセベース、だみ声でシャウトするヴォーカル。そのどれもがまぎれもない「エレクトロニック・ボディ・ミュージック」であり、リアルタイムを知る世代は懐かしく、(自分の様に)リアルタイムを知らない世代には新鮮な音楽として迎えられた。
このアルバムはもう四枚目になるが、相変わらずのエレボディ。汗を垂らしながらハンマーを叩きつけるさま、これまた汗を垂らしながら叫ぶさま、バックで爆音で流れるシンセベースしか脳裏に浮かばないアルバム。
ぼ、ボディィィィィ~~~~ッッッ!!!以上!

Kode IV - Silicon Civilisation

Silicon Generation

Silicon Generation

アメリカのEBM系ユニットの3rd。
EBMから派生したニュービートが後にトランスへと移行、またEBMから派生したインダストリアル・メタルないしインダストリアル・ロックがオルタナティヴ(ロック)に吸収されたことは幾度かこのブログで書いてきた。
本エントリで紹介するアルバムはその前者のEBM⇒ニュービート⇒トランスへと見事な移行を遂げたユニットによるものだ。
このユニットは1980年代後半から1990年代前半のベルギーに幾つも在ったEBM/ニュービート系のレーベル「KK」から出していて、(このレーベルらしく)1st、2ndはエレボディだった。しかし注意深く聴くと、他のバンドからのサンプリング(大胆にもニッツアー・エブのベースラインをサンプリング)、また他ジャンル(アシッド・ハウス)からのサンプリングが目立ち、そしてエレクトロニックでダンサブルなノリに拘る音像は、エレボディというよりはやはり当時の数多のニュービート音源を思わせた。
このアルバムはそのニュービートの抒情的、ダークさを更に拡大させて、トランスへと進化させている。またゴア・トランスの伝説的な人物と言われているゴア・ギルも参加。どういう経緯で参加することになったのかは不明だが、それがそのトランスぶりを加速させている。もしかしたらゴア・ピープルだったのかもね、彼らは。ちなみに本ユニットのPeter Ziegelmeierはこのアルバムを出した一年後にゴア・トランス、サイケデリック・トランス系レーベル「Ceiba Records」を立ち上げている。見事だ。
EBM⇒ニュービート⇒トランスの軌跡が此処に……。興味を持たれた向きは1st、2ndを聴くともっと解り易くその軌跡を聴くことが出来るだろう。お薦めの一枚。

Electro Assassin - Bioculture

Bioculture

Bioculture

ドイツのエレクトロ・インダストリアルデュオの2nd。1993年発表。
「モロFront 242なバンドは?」と問われたなら真っ先にこの二人組を挙げるだろう。それほどまでにこのアルバム(というよりもこの二人は)フロント242すぎる。
この時期……1993年はもうフロント242はインダストリアル・メタル路線に移行しており、しかしそのクオリティの微妙さから徐々にフェードアウトしていった。1990年代最後のエレボ路線になってしまったアルバム「Tyranny >For You<」はサイコーだったが……。
しかし、このデュオはそれを引き継ぐかのように清々しいほどにフロント242ライクなサイバー・パンクス溢れるエレクトロニック・ボディ・ミュージックだ。しかも只フォローするのではなく上手い具合に更新させて来ているのは凄い。その更新内容がサイケデリック・トランスなメロディだから凄い。あの曲がったシンセの音を見事にフロント242と融合させている。
この辺りからジュノ・リアクターなどの所謂サイケデリック・トランスが出てきたが、初期はEBMと同じ括りだった。そのボディとサイトランスの狭間を感じさせてくれるのがこのアルバムだろう。フロント242が好きな向きにはお薦めしたい一枚。