「僕たちと一緒に乗って行こう。僕たちどこまでだって行ける切符持ってるんだ」
「だけどあたしたち、もうここで降りなけぁいけないのよ。」
「ここ天上へ行くとこなんだから。」
「天上へなんか行かなくたっていいじゃないか。ぼくたちここで、天上よりももっといいとこをこさえなけぁいけないって僕の先生が言ったよ。」
「だっておっ母さんも行ってらっしゃるし、それに神さまが仰っしゃるんだわ。」
「そんな神さま、うその神さまだい!」
「あなたの神さま、うその神さまよ。」
「そうじゃないよ。」
「あなたの神さまって、どんな神さまですか。」
「ぼくはほんとうはよく知りません。けれどもそんなんでなしにほんとうのたった一人の神さまです。」
「ほんとうの神さまは、もちろんたった一人です。」
「ああそんなんでなしにたったひとりのほんとうのほんとうの神さまです。」
「だからそうじゃありませんか、わたくしはあなた方がいまにそのほんとうの神さまの前にわたくしたちとお会いになることを祈ります。」
ますむら・ひろし銀河鉄道の夜」より)