Vomito Negro - Fall of An Empire

Fall of An Empire

Fall of An Empire

ベルギーのインダストリアルバンドの8th。
80年代前半から活動を始め、80年代後半にはKKレコードから出していたEBMの全盛期を知るバンド。しかしこのバンドはEBMというより、ニュービートというジャンルがしっくりくるバンド。それは彼等のYouTubeにアップロードされた80年代後半から90年代前半の曲群を聴けば解ると思う。何回もここに書いてきたが、ニュービートというのはベルギーで生まれたジャンルで、当時速くなっていった&商業主義に陥っていたEBMに対するアンチとしてのエレクトロミュージックだが、音を聴く限りでは全くEBMと変わりない。しかし違うところもある。それはアシッドハウスである。ニュービートはシカゴで生まれた電子音楽を積極的に取り入れた。が「商業主義に陥っていたEBMに対するアンチ」としてのアングラなニュービートが取り入れたのは煌びやかなピアノやソウルフルなヴォーカルが入ったようなお気楽なハウスではなかった(その一方でFront 242のメンバーが言う「商業主義のディスコミュージックのニュービート」は歌物ハウスと相違無い)。シカゴのゲットーから生まれた荒んだアシッドハウスを選んだ。代表的なアーティストを挙げれば、BAM BAMやフューチャー、そしてTrax!から出てくるダークなアシッドだろうか。隠そうともしないルサンチマンと心の闇に満ちた電子音楽。そんな暗黒アシッドとインダストリアル/EBMが融合してニュービートが生まれた。またヨーロッパによるダークアシッドの解釈という捉え方もできると思う。
またまたニュービートの成り立ちを書いてしまったがこのアルバムはさっきの説明で済んでしまうものなのだ。というか2010年代になっても80年代後半から90年代前半のニュービートをやってくるとは驚いた。勿論音の厚みや低音の効きに機材の進歩を感じるが、自分の聴く限りではオールドスクールニュービートとしか聴こえない。このダークアシッドとEBMが融合したニュービートはプレトランスを感じるとともにニュービートというジャンルをリアルタイムで聴いて来なかった自分には新鮮だ。こういう時代の隙間のような音楽はこれからもっと聴いていきたい。お薦め。