Foetus Interruptus - Thaw

Thaw (Dig)

Thaw (Dig)

オーストラリア出身のインダストリアル系アーティストの5th。
Wiseblood再びというアルバム。この頃はライブ時にバッキングとしてスワンズのメンバーを従えていたそうだが、そのスワンズのロリ・モシマンとのユニット、ワイズブラッドの1stの続編とも聴こえる、ウルトラ・へビィ・ビートが炸裂するアルバム。
元々あった、コニー・プランクプロデュースのトミー・シュタンプを受け継ぐ凶暴なメタル・ジャンクをスワンズの冷徹無比なメタリック・パンク、そしてフィータス自身から溢れるマントショーを加味したものがワイズブラッドだと自分は思っている。しかもワイズブラッドは1986年ながら後のEBMに通じるというかそのものだった。今作はそれをより過激にメロディアスにダンサブルにしたという印象を強く受けた。
奇しくもこのアルバムが出たのは1988年というエレクトロニック・ボディ・ミュージックが注目され、各々のバンドから重要作がわんさかと出ていた時期。先行はしていたが、このアルバムもそのビックウェーブに乗ったという見方もできるかもしれない。が、聴き進むにつれ、「お前、未来に生きてンな」が満載。メロディは流石にライバッハ的大仰なオーケストラだが、リズムやギターのリフは後のインダストリアル・メタルという所謂90年代のインダストリアルを奏でている。このことからも何かフィータスというアーティストが時代時代において常に先鋭を表現しているといつも感じる。
しかしそんなインダストリアル・メタルだが、90年代のインダストリアル勢がやたら冷たく無機質でひきこもりのような音楽を作っていたが、そこはトミー・シュタンプの化身。硬質なエレクトロ・ビート、メタル・パーカッションがガッシ・ガッシでニッツアー・エブ、ディー・クルップスの雛形となるような熱き熱きエレクトロニック・ボディ・ミュージックをも展開する。がニッツアー・エブ、ディー・クルップスらが持たないサイケデリック性の一面が単なるエレボディには収まりきれなくなり、結果フィータスを異形の者としてしまうのが恐ろしいし面白い。
お薦め。買い。