Leather Strip – Science For The Satanic Citizen

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デンマークEBM/インダストリアル系アーティストの1stEP。1990年発表。
所謂1990年代「ダークエレクトロ」における黎明期。前にも書いた通り1990年代に入るとEBMは霧散していった。だがそれなりに健在でもあった。その証明をするのが本エントリで紹介する音源であり「ダークエレクトロ」だ。
だがこのジャンルの創設者はスキニー・パピーだろう。前回のエントリでポジティヴ・パンクとEBM及びインダストリアルの関係性を書いた。で、この関係性を最初に示したのがスキニー・パピーだった。キリング・ジョークバウハウスのゴシック的な雰囲気とSPKホワイトハウスのようなノイズ・インダストリアルの残虐的、暴力的な音&映像を融合させた暗黒インダストリアルは「ダークエレクトロ」と呼んでも可笑しくないし、そしてその基礎を作った。
しかしながらその独自過ぎる音像は当時(1980年代半ばから後半)異色だったようで、それなりに受けていたが眷属バンドは多くいなかったようだ。だが冒頭にも書いたように1990年代に入るとそのスタイルが(EBMというジャンル内に於いて)主流となる。またNINにも相当な影響を与えていることは彼のアルバムを聴けば明白だろう。トレントと共にマリリン・マンソンを仕掛けたのは何を隠そうスキニー・パピーのミキシングやエンジニア、Pをしていたデイヴ・オギルヴィーだった。要するにスキニー・パピーは早過ぎたのだろう。しかし、当のスキニー・パピーは1990年代にはアルバムを二枚しか出しておらず、2000年代のアルバムは以前の彼らが全く聴けない音になっていった。端的に言えば路線が完全に変わっていた。そのことはメンバーであるドゥエイン・ラドルフ・ゴッテルがヘロインの過剰摂取で死んでしまったことが大きいのかもしれない。その彼の死後である1996年発表のアルバムは彼がまだ健在の頃に録っていた作品だそう。これで彼が全く参加していない2000年代のアルバムがああなってしまったのが解る。
話が逸れてしまったが内容に移りたい。このEPは前述したようなスキニー・パピーだが、それだけでは字が足りない。この時期に台頭し始めていたトランス、そこからちょっと前のニュービートが加味されている。この作品を出しているのがZoth Ommogというレーベルだが、このレーベルは主にその「ニュービート」を多く輩出していた。が、この「ニュービート」は1990年代に入るとトランスと呼ばれるようになり、多くのレーベルが「トランス」へと移行する。しかしZoth Ommogはテクノやらトランスへと走ることが無く、米国を追従するようなインダストリアル・メタル、そして本エントリで紹介するような音源を1990年代に亘って出している。だからこのEPは意思表明にも感じられるしレーベルを代表する一枚なのかもしれない。
話が前後するがEBMから派生したニュービートはトランスへと発展したが、ダークエレクトロにも発展したのだ。でもそれはEBM色が強かったニュービート(メタル・パーカッションが入ってくるのようなトラック)であり、なんだか可笑しな書き方になってしまうが純粋なニュービートを奏で続けていた最後の生き残りだったのかもZoth Ommogは。お薦め。