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Konzept - Hypnautic Beats

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EBM及びインダストリアル系レーベル「Infacted Recordings」の名物シリーズこと「EBM Kult Klassiker」。本エントリで紹介する盤もそのシリーズの一つではあるがジャケの右上に「Frankfurt Techno Kult Klassiker!」とある。
ここで「はて……?」と思った向きは「Infacted Recordings」を始めとするEBMやダークエレクトロ、インダストリアル・メタルを聴いてきた人だろうし、疑問に思わない向きはトランスやテクノを1980年代後半から聴いてきた人だろう。
1980年代半ばから勃興した所謂「エレクトロニック・ボディ・ミュージック」は「ニュービート」という派生ジャンルを産むが、この「ニュービート」はアメリカで同時期にまた勃興していた「アシッド・ハウス」を取り入れたサウンドでもあった。ダークでサイケデリックで実験的なアシッド・ハウスはとてもダンスフロアーから産まれたジャンルだとは思えないが、音を聴くとやはりフロア向けにしか聴こえない不思議さがある。勿論、明るい歌モノのハウスも人気を博していたが、欧州……とりわけドイツ(当時は西ドイツ)とベルギー、あとその周辺国はサイケデリックとダークさを自分たちが作っていたEBMに取り込むことに執着していたようだ。「New Zone」、「Suck Me Plasma」、「Zoth Ommog」というドイツはフランクフルトを拠点とした「Music Research GmbH」を親に持つこれらのレーベルが精力的に前述の「ニュービート」を輩出していた。そして本エントリで紹介するデュオは「New Zone」からの発表だ。
もうお解りになったと思うが、このことから「Frankfurt Techno Kult Klassiker!」と銘打ってあるわけだ。そして、ここにトランスとEBM分水嶺がある。フランクフルトのテクノシーンを盛り上げたのは前に挙げたレーベルだったが、これまた前述した通り「ニュービート」だった。よく語られる「テクノの歴史」という奴にはハウス、デトロイト・テクノ、アシッド・ハウスが出てくるが、EBM及びニュービートについてはちょろっと語られるだけのように思われる。しかし、これまでのことから一番語られるべきはEBMとニュービートだと個人的には思っている。テクノやトランスの根幹はこの盤に入っているような音だったわけでトランスへの橋渡し的なコンピ。こういうコンピが「テクノ」と関わりの薄いレーベルから出てくるのは忸怩たる気分になってしまう。
EBM、ニュービートからトランス、サイケデリック・トランスへの橋渡し的コンピ。全き貴重な音源の宝庫。今まで、こういう音を聴くのには1980年代末期や1990年代初頭の「テクノ」という文字が入っているコンピレーションや12inchを中古盤屋で探さなくてはいけなかった。そのような音源をデジタル・リマスターしてくれた「Infacted Recordings」には感謝の気持ちしかない。ちょうお薦め。買え!以上。