Leæther Strip - Double Or Nothing

Double Or Nothing

Double Or Nothing

デンマークのエレクトロ・インダストリアル系アーティストのシングルと初期の音源を集めた2枚組。Zoth Ommogのライセンスリリースを手掛けていたアメリカのレーベル「Cleopatra」が独自に編集したもの。
このアーティストは1989年にZoth Ommogから「Japanese Bodies」というシングルでデビューしていて、1980年代初期から活動しているフロント242、スキニー・パピー、ニッツアー・エブなんかとはスタートが遅くて、恐らく世代も違っている。物心ついてから前述したバンド達の音源を聴いてたような連中がこの辺りからデビューし、それが1990年代のインダストリアル(メタル)やEBM、ダーク・エレクトロシーンの中核を担って行った。スーサイド・コマンドー、アンプスカット、このエントリで取り上げるレザーストリップもそうだ。
レザーストリップがデビューを果たしたレーベル「Zoth Ommog」はこの時代は所謂「ベルジャン・ニュービート」と呼ばれていた音源を多く出していたレーベルで、欧州のエレクトロニック・ダンス・ミュージックなレーベルの殆どはその「ニュービートレーベル」だったようだ。
しかし、このレザー・ストリップの初期の音源を聴けば解るように、数多のニュービートレーベルとは異なっていることに気が付く。スキニー・パピーとニッツアー・エブが混ざった様な直線的でノイジーなエレボ。そしてトランシーなメロディ。元々ニュービートはエレボの派生ジャンルではあるが、音を聴けばわかるようトランスの原点にもなっているため共通項は多いが、このアーティストはトランスを奏でながらも旧来のエレボやインダストリアルも奏でることが出来ている。後に多くのニュービートレーベルがトランスやテクノに移行して行くが、Zoth Ommogはインダストリアル・メタルやエレボをリリースするレーベルに移行する。まるで先祖がえりしているような感じだが、本エントリの音を聴けば、前述したように明らかに旧来のエレボやインダストリアルとは異なっている。
ジャーマン・トランスにあった(いかにも欧州的な)ゴシカルかつ酩酊かつ陶酔していくメロディがエレクトロ・ハンマービートの上を疾走し、ディストーションヴォイスが叫ぶ。
1990年代のインダストリアルとしてインダストリアル・メタル及びロックが語られることが多いが、このアーティストの様なトランスとエレボ、そしてインダストリアルの狭間に存在していた音も見逃してはならないと思う。この二枚組は冒頭に書いた通りアメリカのレーベル「Cleopatra」から出ているのでブックオフやユニオンで探せば見つかる確率が高いので入手は難しくはない……ハズなので興味を持たれた向きは探してみるといいだろう。