Tim Hecker - Virgins

Virgins [Analog]

Virgins [Analog]

アメリカのIDM系アーティストの8th。
暑い……。というわけで暑苦しいエレボとかインメタとか紹介する気が全く起きてこないので、このアルバムを紹介したい。
このアーティストはエレクトロニカIDM系の全盛期であった2000年代初頭から頭角を現し始めたのだけど、その音像は同時代のそれとは大きく異なっていた。でも当時はそれが何故異なっているのかが、全く気がつけなかったのだが……。
1970年代末期から、「ノイズ・インダストリアル」と呼ばれるジャンルが勃興したのはこのブログを見る向きはご存じだろう。ノイズ、と言うと騒々しい音楽というのが一般的な認識だが、そうではない音源がいくつも存在した。それはアンビエントと呼んでも可笑しくないもので、代表的なアーティストやバンドを挙げるとソヴィエト・フランス、ルストモード、ノクターナル・エミッションズ、コントロールド・ブリーディング、カレント93、ヴァジリスク、デス・イン・ジュンだろうか。これらのバンド、アーティストは主にインダストリアル・シーンで語られていたが、今聴くとIDMアンビエントに近い。そういう逸脱していた音を当時はインダストリアルの棚に入れていただけなのかもしれない。まぁノクターナル・エミッションズ、コントロールド・ブリーディングはハーシュなインダストリアルも作っていたので、一概にアンビエントとは言えなかったりする。
このアルバムも前述したバンド、アーティストに近い。ダークで耽美なアンビエント……それでいて重苦しくない、清涼感すら感じる音はヴァジリスクやノクターナル・エミッションズのアンビエントにソックリだ。どこか浮世離れしたような音もソックリ。
インダストリアル・シーンの中で逸脱していた部分はこういう形で継承されていたのではないかと思えるアルバム。とんでもない傑作だと個人的に思う。お薦めの一枚。