Lunacy - Age of Truth

Age of Truth

Age of Truth

  • 発売日: 2019/11/22
  • メディア: MP3 ダウンロード
アメリカのダークウェイヴ系アーティストの1st。
年の瀬に2019年一番ヤバいのがキマした。これはKTLとダンス・ソサエティ、シスターズ・オブ・マーシーの共演と書きたくなるような音像。
漆黒の闇に吹雪が身体中に当たって来るような感じ。暗黒ニューウェイヴと轟音のインダストリアル・ノイズの融合がひたすらにヤバし。
PrurientやBlackest Ever Blackの音を思い出したりしたが、こちらの方は前述したようによりゴス、ニューウェイヴ度が高い。ラムレーのような荒涼としたインダストリアルサウンドにダンス・ソサエティのような暗く哀愁かつ耽美なメロディが絡みついて恐ろしいまでに感動的な音が身体中に当たってくる。
昨今……というよりも2000年代半ばからCD市場が衰退していって、有名なバンド、アーティスト以外はデータ配信が主流になっていったせいで見逃しがちだったが、このアルバムの様に見逃してはいけない音源が目白押しになっている。
特に本エントリのダークウェイヴ、インダストリアル、EBM系の音源は思わず鳥肌が立ってしまうようなものが多い。しかもキャリアが浅く、年齢的にも若いのが恐ろしい。きっと自分たちで過去の音を探し出したのだろう。
PrurientやBlackest Ever Blackの音源が好きな向きは必聴!ラムレーとダンス・ソサエティが交差するとき……。

V.A. – Dancing In Darkness

Dancing in the Darkness

Dancing in the Darkness

1980年代のインダストリアル・ビート、EBM、ダークウェイブ系の音源を集めた盤。
あれ?このジャケ、どこかで見たことがあるぞ……?と思った向きには(多分)説明不要のコンピレーションだと思った。レーベルもPlay It Again Sam(略してPIAS)こと[PIAS]だしね。
しかし、あの時代のあのコンピは題にあるように「コレはエレクロニック・ボディ・ミュージックだ!」と一緒くたにネオンなんちゃらやクリスなんちゃらやカサンドラなんちゃらをフロントなんちゃらと並べておりましたが、今回はジャケにちゃんとEBMの他にブラック・シンセとかダーク・ビーツとか表記があります。
中身も同じかと思えば(最初に見た時は再発盤かと思っていた)、TG、DAFCabaret VoltaireMeat Beat Manifestoといったルーツ的だったり、その当時では微妙に外れていた音源も入ってマス。Polyphonic Size、Dirk Da Davo(ネオン・ジャッジメントのヴォーカル兼ギター)といったもろニュー・ウェイヴの残党的な音も入っているのは全てがフラットになった今だからだろうか。まぁ、EBMもNWの残党的なジャンルではあるけど。
でもUKの大都市で生まれたようなNWとは違って、郊外や地方の都市で生まれたような微妙に垢抜けない音に仕上がっているのがこのジャンルの良さだと感じる。このコンピに収録されている音源も前述したルーツ的な音源を除けば、ベルギー、旧ユーゴスラヴィアアメリカのサンフランシスコ出身者だったり。
この手のジャンルをある程度聴いている向きには全く新鮮さはないけど、クレジット兼(デザインがジャケ画の)ポスターも付いてくるのでそういうものや記念碑的なものが好きな向きは買ってみては如何でしょうか?ちなみに自分はポスター目当て。あとリアルタイム世代は懐かしさで思わず手に取ってしまうのでは?
遂に本家本元が動いた!次の(PIASの)動きに要チェックやで!

Siglo XX - [Box]

Box -Ltd-

Box -Ltd-

1980年代に活躍したベルギーのコールドウェイヴ、ダークウェイヴバンドの初期作を収録した編集盤。
新宿〇ニオ〇で発見したのですが「ベルギーのジョイ・ディヴィジョン」なる煽りが書いてあったので購入してみました。あとPIASだから(これに関しては後述する)。
陰鬱かつ荒涼としたメロディと打ち込みビートが如何にも「ポジティヴ・パンク」していて確かにジョイ・ディヴィジョンです。ロウライフ、アンド・オルソー・ジ・ツリーズなんかの抒情派ネオサイケっぽくもあります。
というかこの時期にPIASに居たネオサイケとダークウェイヴ系のバンド群の音ですね。ネオン・ジャッジメントカサンドラ・コンプレックス、トリゾミー21らの音ですね。これらのバンド群はジョイ・ディヴィジョンでシスターズ・オヴ・マーシーに影響を確実に受けていて、後にネオン・ジャッジメントカサンドラ・コンプレックスは「This is Electronic body music」というコンピに楽曲が収録されてEBMの範疇に入れられますが、首を傾げたくなると思います。
が、ネオン・ジャッジメントカサンドラ・コンプレックスはよりエレクトロニクスを多用した音作りを前面に推しだしており、そういう意味で前述のコンピに収録されたのかもしれない。対する本エントリで紹介するバンドはエレクトロ二クスを多用しながらも前面に推しだすことは無くギター、ベース、サックス、ピアノ等の生楽器とバランス良く聴かせてくれます。トリゾミー21、ロウライフ、アンド・オルソー・ジ・ツリーズ等のゆるやかなアンビエントかつサイケな音像が全編に亘って続く感じですね。
1980年代のPIASサウンド、抒情派ネオサイケ好きは買って損は無いと思った。これを期にネオン・ジャッジメントカサンドラ・コンプレックス、トリゾミー21のアルバムがデジタルリマスタされることを望みます。

VR Sex - Human Traffic Jam

Human Traffic Jam

Human Traffic Jam

米国のダークウェイヴバンドの1st。
Drab Majestyのメンバーを中心とした3人組だそうで、Drab Majestyがそうだったようにこのアルバムも黒い波が全編に亘って襲ってくる。
しかし、Drab Majestyと比較するとこのバンドはよりダークかつハードでヘヴィ・インダストリアル。キュアーの「ポルノグラフィー」やアシッドなシンセ、ギター、そしてエレクトロニクス・ハンマービートはエイリアン・セックス・フィエンドやベルフェゴーレを思い起こさせる。特に6、7曲目はキュアーが2000年代のエレクトロをやっているような耽美でダークなエレクトロ具合が素晴らしい。
本ブログでも紹介したShe Past Awayもそうだが、本当に昨今この手の音が台頭しているようだ。このアルバムを出しているDais RecordsもそうだがドイツのDetriti Records、ロシアのSierpien Recordsなどなど一聴するだけで、1980年代半ばから後半のフールズメイト誌が脳裏に浮かんできてしまうような暗黒ニューウェイヴぶりには驚かされる。しかもどの音源もここ数年で出たものが殆どで(つまりリアルタイムでは無い後追い世代なんだろう)、自分自身も後追いなだけに仲間が出来たようで嬉しい。ヴイジュアルもシスターズ・オブ・マーシーやフィールズ・オブ・ザ・ネフィリムにしか見えなかったりするのもイイ。マジで後追い世代が「こういう服装をして暗い雰囲気を醸し出すのがダークウェイヴなんでしょう?」というコスプレ感覚でやっているものと思われる。と同時に明らかにテクノ、トランスを通過した音なのにも驚かされる。本エントリで紹介しているアルバムもそうだが。
またこのDais Recordsはユース・コードといった新興EBMに加えてミッシング・ファウンデーション、MB、Prurientといった新旧のインダストリアルサウンドも出しているのが興味深い。要チェックなレーベルなのは間違いないだろう。
ネオ・ダークウェイヴな音像が此処に……。今年のベスト盤!

DAF - 1st Step To Heaven

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DAF - 1st Step To Heaven
最早このブログを覗いているような向きには説明不要なドイツの二人組による6th。
1stはアタタックというホルガー・ヒラー、デア・プラン、アンドレアス・ドラウらが居た所謂「ノイエ・ドイチェ・ヴェレ」を代表するレーベルから出て、続く2ndはこれまた英国ニューウェイヴを代表するMUTEから出ていた。
しかしながら初期の二枚はメンバーが後にデア・プランのメンバーになるピロレーター、リエゾン・ダンジェルーズのクリス・ハースらが居たせいか、試行錯誤かつ方向性が定まっていない。
メジャーレーベルの「ヴァージン」に移籍して発表した3rdが彼ら二人の方向性を定め、後の「エレクトロニック・ボディ・ミュージック」というジャンルを構築(当時、似たような音がドイツ、その周辺国を主としてあったが、彼らがいち早く確立したように思える)。その極限までに音を削ぎ落としながら、ハードコアさを体現する縦ノリなエレクトロニック・パンクは同郷のクラフトワークなどのエレクトロ・ポップスとはまるで趣が異なっていた。
本作はそのメジャーレーベルの「ヴァージン」からも離れて彼らの本国であるドイツのメジャーレーベル「アリオラ・レコード」が取次をしていたDean Recordsからのリリース。そのことからなのかは知らないが、本作は以前の縦ノリからエレクトロ、ハイエナジーなどの所謂ディスコの横ノリへと移行している。本作の前にリリースされたガビ・デルガドのソロアルバムがファンクやラテン音楽を取り入れたものだったが、このアルバムはそのノリを更にエレクトロニックな方向に推し進めている。
前述したエレクトロやハイエナジーにラテンのりを加味した音は以前のDAFのエレクトロニック・パンクを期待した向きには当時どう聴こえたのだろうか(先行シングルが出た後のインタビュ記事(フールズメイト誌)を読むとロバート・ゲールが「僕たちとしてはそれほど懸念していない。例え一部分のそういったファンを失ったとしても、以前よりさらに沢山の理解者が得られると信じているし……。是が非でも暗いサウンドが欲しい人にはもう既に新しいアイドルが出来ている筈だからね」と答えている)。曲によってはイタロ・ディスコにしか聴こえないものもあったりする。ちなみに1998年に再発されてはいるがアマゾンでは品切れ(そもそもアマゾンにあるのが再発盤なのかも不明)、自分の観測範囲では再発盤を観たことが無い。ので入手には苦労するだろう(自分が持っているのは1986年に発売された日本盤)。

Birmingham 6 - Error Of Judgement

Error of Judgement

Error of Judgement

デンマークのエレクトロ・インダストリアル/EBM系グループの3rd。
ほぼ全編に亘ってフロント242のジャン-リュック・デ・マイヤーをフィーチャー。その所為かフロント242の「06:21:03:11 Up Evil」の続きを聴いているような気分になる。
しかし、「06:21:03:11 Up Evil」がインダストリアル・メタルを取り入れたものの、そのジャンルとしては消化不良を起こしていた。アルバム自体の完成度は高いが、前述した通りいまいちインメタへの乗りきれなさが残ってしまっていた。
が、このアルバムはその消化不良が綺麗さっぱり無くなり……どころか追加でもう一杯という感じで、見事なレベルアップを果たしている、それがフロント242でないのが惜しいが……。
性急なエレクトロニック・ハンマー・ビートの上を如何にもEBMなシンセベース、切れの良いスラッシュ・ギター、トランシーなシンセ・メロディが疾走し、ジャン-リュック・デ・マイヤーのヴォーカルもそこに絡みつつ疾走。
ディー・クルップス型の熱きインダストリアル・メタルを奏でながらも、1990年代のフロント242を感じる超奇怪なアルバム。

Nitzer Ebb - Showtime

Showtime -Bonus Tr-

Showtime -Bonus Tr-

イギリスのEBM/インダストリアルビート系デュオの3rd。
遅れてきたディー・クルップス、DAFのフォロワーとして現れた彼らも2nd辺りからシーンの動向が気になってしまったのか、アシッド・ハウスのノリを全面的に取り入れて他のインダストリアル・ビート勢とは趣が異なっていた。それはリミキサーにも表れていて、UKテクノの雄(だった)ウィリアム・オービットやMUTEの長(であった)ダニエル・ミラーらに頼むなど、よりダンスフロア志向が見られた。
で、この三枚目はフロア志向と初期のヘヴィなロック志向の狭間のような感じ。それは冒頭のギターのようなシンセ音からして解るだろう。当時、ミニストリーナイン・インチ・ネイルズや(サンプリングだが)ヤング・ゴッズのようなスラッシュ・メタルをインダストリアルに取込んだ、所謂「インダストリアル・メタル」が出始める一方でよりエレクトロニクスでフロア向けのジャンル「ニュービート」も現れた。この手のジャンルはフェーズ2に入っていた。そしてこのフェーズ2より、後の(米国を中心とした)オルタナティヴへ行く者たち、よりエレクトロニクスを追求してトランスへと向かう者たちと分かれることになる。
このアルバムはその分水嶺を表わしている。オルタナへの萌芽、トランスへの萌芽、その両方の芽を聴くことが出来るだろう。シングルではリミキサーに後のケミカル・ブラザーズに改名するダスト・ブラザーズの名があったりするのもその分水嶺を表わしていて面白い。