DAF - Alles ist Gut

Alles ist Gut

Alles ist Gut

3rd。

80年のハロウィン前後だったと思うが、ロンドンのハマースミス駅近くの小ホールで「Three Mantras」をリリースしたばかりのキャバレー・ヴォルテールのギグがあった。会場にはいってみるとステージ上にはドラムセットと小さなギターアンプが置いてあるだけでがらんとしたまま。演奏時間の遅れはいつものことなので「何だセッティングまだなのかよー」などと思って、DJのかけるファッド・ガジェットに耳をかたむけているうちに、フロントアクト(つまり前座)らしき極端に髪の短い長身の男が現れた。彼がアンプ上に置いてあったラジカセのスイッチを入れるとPAから爆音に近いシンセが流れ、タイトこの上ないドラムがそのシーケンスにビートを叩き込み始めた。観客ははじけたスプリングのように飛び跳ね始める。先ほどのヴォーカルはステージ上を左右に飛び跳ねて激しく聴衆を挑発し続けた。(中略)アンコールの時などはカセットをプレイモードのまま「ぎゅるるる〜ッ」と巻き戻して曲を出していた。

以上の引用文章はマーキー別冊の「ジャーマン・エレクトロ・リミックス」から。
しかし引用文はなんという素晴らしい文章だと思う。これはどまでに的確にボディ・ミュージックのスタイルや始まりを表した文章はないだろう。だってWIREで彼等のライブを経験して全く同じだったのだから。2003年のWireだった。歳とったとはいえガビは激しく煽り、縦ノリドラム・ビートでゆったりと踊るテクノリスナーを飛び跳ねさせていた。2003年でそうだったのだから、80年は上の文章如く驚いただろう。ニューウェイヴがロックでなければなんでもいいといってディスコを取り入れていたバンド達とは一線を引く、シンセの音色と縦ノリドラム。あまりに新しすぎてこれが本当の意味で理解されるには80年代後半から現れるEBM以降だろう。
音数を削りに削って肉体電子音楽を作った彼等は正にオリジネイター。ここからEBMが始まったのだ。見逃すな!超がつくほどお薦め。