Cabaret Voltaire - The Crackdown

イギリスのインダストリアル系バンドの5th。祝リマスターということで(遅いが)紹介したい。
後にハフラートリオなる極悪ノイズバンド組むクリス・ワトソンが抜けて、リチャード・H・カーク、ステファン・マリンダーのデュオになってからの一枚目。
それまでのノイズ・インダストリアルから一転してポップス、ダンス音楽を取り入れたアルバム。前作からもその路線だったが、いまいち乗り切れない、過渡期を感じる一枚だった。二人とも元々ジェームス・ブラウンなんかのファンクを好む向きだったらしく、そういう音楽(ノイズ・インダストリアル)にファンクを融合させてみようという試みだったよう。その実験が1980年代後半からのエレクトロニック・ボディ・ミュージックを産むとは、その時点では誰も思わなかっただろう。
とは言え、後々を聴くにつれこのアルバムもまた過渡期の趣がある。ジョイ・ディヴィジョンやア・サーテン・レイシオのポジティヴ・パンクや冷たいNWファンクからの影響が大で次のアルバムと比較すると黒人的なファンクが薄い。しかし、その攻撃的ポジパンやコールド・ファンクは曇り空の方が多い英国的な憂鬱を感じると同時にどこか抜けているほのぼのしていて、夜より日中に聴きたくなることが多い。というか家で聴くより屋外で再生する頻度の方が最近は多い。
ダブ、ファンクは後々のアルバム方が完成している。がファンクを取り入れながらもそれまでのパンクが勝ってしまう、抜けが悪いこのアルバムは後年を見るに貴重だろう。当時はメジャーに移ったことや音楽性の変化にずいぶん叩かれたそうだが、以上のことからそうとう辺境の音楽と見ることもできる。だって彼らは前述の「ファンク」を鳴らしたが、(当時のメディアによると)ダンス音楽とは誰も捉えなかったそうだから。お薦め。