Signal Aout 42 – Contrast

Contrast [Import] [Made In Austria]

Contrast [Import] [Made In Austria]

ベルギーEBM系バンドの2nd。
このバンドはSignalというノイズ・インダストリアルバンドが前身だそう。が、そんな事実が黒歴史だとでも語っているような所謂ベルジャンのニュービート。しかもフロント242タイプの。
先ずこの「ニュービート」というジャンルを説明すると1980年代後半に台頭していたEBMをより重く、ダンサブルに、というもので端的に表すとクラブサウンドだ。またEBMがハードロック的展開でBPMが速くなっていく一方でBPMを遅くしていったのがニュービート。あと当時UKで一大ムーブメントとなっていたアシッド・ハウスやちょっと前のイタリア産のエレクトロ・ディスコこと「イタロ・ディスコ」を加味していたりもする。
とはいえ元がEBMなのでやっぱりイタロやアシッド・ハウスと比べると基本的に暗い。インダストリアル特有の暗さというかね。これが時代が進むとトランス、ジャーマン・トランスを経てゴア、サイケデリック・トランスに発展する。トランスというとちゃらいイメージがあるけど、それは1990年代のユーロビートと結びついたようなユーロ・トランス、ダッチ・トランスを指していることが多い。それはポップなジャーマン・トランスも含むが。そしてそれらユーロ・トランスは今EDMという形で聴くことが出来る。試に動画サイトでゴア、サイケトランスで検索して欲しい。あと初期のトランスも。前述したとおり暗い調べを聴く羽目になるハズだ。
このアルバムに移るとフロント242という言葉で済んでしまうような音。ベルギー産のニュービートアクトの多くは先立であるフロント242を「詰めが甘い」と批判したが、皮肉にも多くのニュービートもまたその模倣にしか過ぎなかったことが動画サイトで多くの音源を聴くことで解ってしまう。でもそれは自分には悪い事では無くて、自分によし、うん、よしな音楽。確かに模倣ではあるけどインダストリアルでありながらトランシーでダークな響きが惹かれる。ユーロビート紛いのトランスには全くないリアル・トランスとでも呼びたいような怪しい輝きに満ちた音に惹かれてしまう。このアルバムだってそうだ。過去のインダストリアルと交差しながら(SPKのメタルダンスの特徴的なリフをサンプリングしている)、フロント242的なダークかつトランシーなメロディを鳴らしながらもより歪ませたものは後のサイケ・トランスを思わしてしまう。
フロント242、初期のトランスが好きな向きには胸を張ってお薦めしたい一枚。この手のニュービートは情報も少なく、纏めるような人もまた少ないので自分もまだまだだが積極的に集めていきたいと思った。