Yeht Mae – 1000 Veins

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米国のエレクトロ・インダストリアルバンドの1st。
先日のスーサイド・コマンドーのアルバム紹介エントリーでも触れたダークエレクトロだが、本エントリで紹介するアルバムはまさしくソレ。で、その時にスキニー・パピーについても触れたけど、またこのアルバムもそうだ(笑)。
もう何回も書いたけど1990年代に入るとEBMは衰退していき、そこからの分派であるニュービートからのハードコア(テクノ)とトランス、そしてインダストリアル・メタルが台頭していった。前者は欧州と日本、後者は米国の音楽シーンを牽引していた。特に前者のハードコアはここ日本ではデス・テクノやジュリアナ・テクノと呼ばれて人気を博していた。
が、しかしインダストリアルやEBMが絶滅したというわけでもなく、留まり続けているバンド達もまたいて、それが本エントリで紹介する音源。とはいえメタルやトランスな雰囲気も見られて混沌としている。でも大きな部分ではスキニー・パピー的な暗黒インダストリアルだろう。1980年代のEBMと1990年代のEBMとの違いはそこにあったりする。イタリアのパンコウ、ベルギーのネオン・ジャッジメント、à; Grumh...、Parade Ground、英国のカサンドラ・コンプレックスの様などこか牧歌的なものが無くなって来た代わりに重く暗いメロディを主旋律としたEBMが(シーンは縮小したが)台頭していたようだ(リアルタイムではないのであくまでも音源を聴いての考察。悪しからず)。
このアルバムはその黎明期を感じさせる内容。ベルギー産のニュービート、スキニー・パピーを融合させ暗い酩酊を魅せる。彼らは2ndからはドイツのZoth Ommogから出しているがそこにハマる音像。Zoth Ommogは1980年代後半に他のエレクトロニック系レーベルと同じく「ニュービート」だったが、1990年代に入ると(多くのニュービートレーベルがハードコアとトランスに移行したのにも関わらず)トランスには向かわずインダストリアルな方向に傾倒し欧州やその他の国にいる残党を纏め上げた正に「尊い……」レーベル。でもそこにいたPちゃんのTalla 2XLCはジャーマン・トランス方面で有名になる。こういうことからもEBMはトランスやサイケデリック・トランスの源流だったりするのが解る。
1990年代初期という時代のEBMを象徴するようなアルバムかつ黎明期でここから「ダークエレクトロ」へと移って行くのが感じられる。またそれは前述した通りサイケデリック・トランスへとも移って行く。興味を持たれた向きはZoth Ommogやクレオパトラ周辺を聴いてみてはいかがでしょうか。