Tim Hecker - Ravedeath,1972

Ravedeath 1972

Ravedeath 1972

アメリカのIDM系アーティストの7th。
このブログで2013年発表の「Virgins」を紹介して、1980年代のアンビエントなインダストリアルとの相関関係を書いてみたが、このアルバムは正にそれだ。
先ずジャケットの大学の屋上と思しき場所からピアノを落している古い写真(アルバムタイトルにあるように1972年だろう)からクラ二オクラスト的な退廃がビシバシ伝わってくる。
そして、音もそのクラ二オクラストの諸作、コントロールド・ブリーディング、ノクターナル・エミッションズ、コイルのアンビエントを思わすインダストリアル・アンビエント。またデス・イン・ジューン、カレント93、ヴァジリスク、ソビエト・フランスといった所謂「リチュアル・ノイズ」も思い起こすことだろう。
しかし、このアルバムが圧倒的なのは1990年代のワープを代表とするインテリジェント・テクノ(後のIDMエレクトロニカ)も思わせるメロディや展開を持っているとこだろう。初期オウテカ、B12、そしてAFXの「アンビエント・ワークス」といった音源が浮かぶ。このアシッド・ハウスを端とするレイヴやトランスを通過したインテリジェント・テクノはトランスの酩酊感や陶酔感をそのままにビートだけを削除したような音でブライアン・イーノが提唱するアンビエント「家具の様な音楽」とは全く異なっていた。
タイトルの「Ravedeath」にあるように狂騒の終わりを表わしたインテリジェント・テクノと退廃的な「リチュアル・ノイズ」が交差した恐るべきアルバム。KTLなんかのドローン系のブラック・メタルが好きな向きにもお薦めしたい一枚。