Exploring Jezebel - On A Business Trip To London

On a Business Trip to London

On a Business Trip to London

Vatican Shadow、Prurient等等多数の名義を持つIan Dominick Fernowによるプロジェクトの2nd。
Vatican Shadow名義ではビート系のインダストリアル・テクノを鳴らしているけど、このExploring JezebelではPrurient名義を思い起こさせるノイズ・インダストリアル、パワーエレクトロニクス。しかし、Vatican Shadowが1990年代のUKインテリジェント・テクノやアンビエントSPKやラムレーとミックスさせたような異形のノイズ・インダストリアル・テクノを聴かせてくれたようにこの名義でも面白い音を聴かせてくれる。
ホワイトハウスエレクトロニカを演っている……と表せばいいのだろうか。オウテカやボラ、ジェガといったスカムの連中が怪しげなパワエレをを演っているような感じだ。陶酔感がありダークでくすんだような色合いを耳に痛い雑音と混ぜるという身震いがするような音色を魅せる。ホワイトハウスを匂わすエロスなノリも良い。
PitaやKTLと同様に1980年代の所謂「ノイズ・インダストリアル」をアップデートさせたような音はネオ・インダストリアルと呼びたい雰囲気が横溢している。エレクトロニカを聴いてきた向きにもノイズ・ヘッズにもお薦めしたい一枚。

Suicide - A Way Of Life

Way of Life (+Bonus CD)

Way of Life (+Bonus CD)

アメリカのシンセ・パンクデュオの2nd。
この日本語で「自殺」を指すバンドは方々で語られている程の伝説的な人達なのですが、このブログで取り上げるということは……。まぁぶっちゃけると相当後続…しかもエレボディやビート・インダストリアル系に影響を与えているのですわ。てかほとんどのバンドやアーティストが影響されてるし影響が無いバンドなんていないのでは?という暴言を吐いても良い位。
このアルバムは1970年代末期にアルバムやシングルを出しったきり正に「沈黙」(間にライヴ盤があったりするけど)していた彼らが、1980年代後半の所謂「エレクトロニック・ボディ・ミュージック」の台頭により、どうやら引っ張り出された模様。こういう引っ張り出されて祭り上げられた結果、(当人たちが勘違いをして)つまらない音を出してフェードアウトするのが「リバイバル・ヒット」という言葉が持つ悲しみを味あわせてくれるが、この二人にはその慣わしには乗らなかった模様。元々確固とした音を持っていただけに「ハイプ」とは無縁だったのかもしれない。
1970年代末期の音と同様、どんよりとケイオスな音像……ダーク・エレクトロニック・サイケデリックとも呼びたいようなメロディ。そこにパンキッシュで性急かつチープなエレクトロニック・ビートをアラン・ヴェガのシャウトが時に斬り込み、時にどんよりとダウナーな雰囲気を醸し出している。特に哀愁と陶酔感がある2曲目は彼らの代表曲「Dream Baby Dream」に負けず劣らずだ。
自分が持っている盤は2005年にMUTEのサブレーベル「Blast First」から出ていたリマスタ盤+ライヴ盤の二枚組(オリジナルはあの米国EBM系レーベル「Wax Trax! Records」から1988年に出ている)。本エントリではライヴ盤の紹介文は書かないが、いつかそれも書きたいと思う。
フィータス、DAF、そしてあらゆるEBM、ビート系インダストリアルの原点が此処にある。今挙げたアーティスト、ジャンルが好きな向きは聴いておいて損は無いだろう。アラン・ヴェガが鬼籍に入ってしまったのは残念でならないが……。
お薦め。買え!以上!

Hocico - Aquí Y Ahora En El Silencio

Aqui Y Ahora En El Silencio

Aqui Y Ahora En El Silencio

メキシコのダークEBM/アグロテックデュオのEP。
メキシコの音楽……というか南米(ブラジルとか)はデス・メタルやハードコア(パンク)が盛んで宇川直宏氏曰く「違う宗派の説法を無理やり聴かされている様な錯覚に陥る」というもの。桁違いの犯罪が蔓延る南米のリアルを音楽で思う存分に聴かせてくれるわけだ。
このデュオは1990年代半ばから活動し始めるという長いキャリアを持っている。基本的にどの盤も同じだが、イケイケのダッチ・トランスの様な2000年代前半の作品よりも初期と近年はガチガチのハードコア・ボディなので本エントリではその時期の作品を紹介したい。
野太いながらも性急なエレクトロ・ハンマー・ビートの上をゴシカルでダークかつトランシーなメロディとデンデケシンセベースが疾走し、そしてブラック・メタルかと思うような歪んで潰れていて全く何を言っているのか聴き取れないようなシャウトがこれまた同様に疾走する。リビドーの迸り、怒り、鬱屈が爆走していく恐ろしき作品。似たようなバンド、アーティストを挙げるならSuicide Commando、アンプスカットだろうか。
フロント242、ニッツアー・エブ、リヴォルティング・コックス、スキニー・パピーが南米のハードコアとミックスされることにより産まれるメヒコ・ボディ・ミュージックが此処に……。お薦め。

Leæther Strip - Retention No 3

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祝来日!デンマークのダークEBM/ビート・インダストリアル系アーティストの2nd+2nd再録という二枚組ボックスセット。
アメリカのクレオパトラ、ドイツのZoth Ommog、Off Beat、Machineryというレーベルが霧散したハズのEBM、ビート・インダストリアルを1990年代に亘って展開していた。その奮闘ぶりが我日本のメディアで取り上げられることは皆無に等しかったようだが(当方、後追いのため間違ってる可能性高し。メディア展開情報求む!)、今日日ネットを覗いてみるとリアルタイムで聴いてた人間は幾らかいるようで、その人たちの情報は(自分にとって)宝だ。
このボックスは冒頭にも書いた通りだが、本エントリでは2ndを取り挙げたい。2ndは1992年に発表されたアルバムだが、1989年に出した1stよりも格段にレベルアップをしている。前作は初期スキニー・パピーとフロント242を融合させたような音で中々に光るものがあったが、音のスカスカぶりが隠せなく、なんとも惜しさがあった。しかし、このアルバムはどうだ。歪んで性急なエレクトロ・ハンマー・ビートに錆一つないメタル・パーカッションの上をこれまた歪んで陶酔感のあるダーク・メロディにアシッド・シンセ・ベース、そしてディストーション・ヴォイスが吠える。前半のスカスカを歪んだシンセベースと怪しげでトランシーなメロディが埋める。またよくダーク系EBMやインダストリアルにありがちなダルさは無くひたすらに疾走と緊張感を前面に推しだす。ナイン・インチ・ネイルズがニッツアー・エブを演ったらこうなるのかもしれない。
正に「随分と鍛え直したな……」と言いたくなるアルバム。2ndにしてちょう傑作!このボックスを出したレーベル「アルファ・マトリックス」は日本でも入手し易いので興味を持たれた向きは買ってみるといいだろう。

Peace, Love And Pitbulls - Red Sonic Underwear

Red Sonic Underwear

Red Sonic Underwear

スウェーデンのインダストリアル・ロックバンドの2nd。
1994年といえばラインナップを見るとNINの大傑作「The Downward Spiral」やその前年に同じく傑作KMFDMの「Angst」、PIGの「The Swining」などが発表されるなど、所謂「インダストリアル・ロック」が大爆発を起こしている。しかし、そのシーンの立役者であったミニストリーが「脱インダストリアル宣言」をして立ち去ってしまったが……。
本エントリーで紹介する盤はそのシーンの盛り上がりぶりを象徴するような大傑作。後続ながらヘヴィなエレクトロニック・ビートにうるさきギターとアシッドなデジタル・リフを魅せてくれる。北欧のこの手のサウンドといえばパイオニアのヤング・ゴッズやインダストリアル・スラッシュのスワンプ・テロリスツ、クルートがいたが、このバンドはアメリカ的なインダストリアル・ロックを奏でる。それもミニストリー型のスラッシュ・メタル色の強いインダストリアル・ロックだ。しかし、サイバーなデジタルリフや金属音を強調する辺りはスイスのスワンプ・テロリスツを思わせる。
強烈にドライヴするインダストリアル・スラッシュを聴かせてくれるかと思えばドロドロのインダストリアルをも聴かせてくれるハイ・クオリティなアルバム。この手のジャンルを好む向きなら必聴で必購入だ!以上!

Psychopomps - First Blood

First Blood

First Blood

デンマークのエレクトロ・インダストリアルバンドの初期シングルや未発表の曲を集めたコンピレーションアルバム。
祝レザー・ストリップ来日!ということで彼の出身国であるデンマークのボディ、インダストリアル・メタルを紹介したい。このバンドの初期はレザー・ストリップのクラウス・ラールセンがプロデュースしていたし。
そういうことから、レザーストリップ型のサイケデリック・トランスとエレボディが融合したような音が満載。勿論ゴシックでダークな部分もある。1990年代の欧州におけるインダストリアルはアメリカのインダストリアル・ロックやメタルとはまた違った進化を見せてくれるのが興味深い。
以前、EBM及びその派生ジャンルであるニュービートからトランスが産まれたと書いたと思う。1990年代初期のトランス……例えば大ヒットしたエイジ・オヴ・ラヴの曲を聴いてみれば解ると思うが非常にダークでゴシカルなメロディを奏でている。これは同時期のエレクトロニック・ダンス・ミュージック、ハウスやテクノとは明らかに違っていた。しかしそれは冒頭にも書いたようにEBMを起源とするところが大きい。その起源とするEBMもまたポジティヴ・パンクというゴシック・ロックを基の一つとして持っているからだ。
このバンドの音は1990年代初期のトランスを取り入れながらもエレボディやインダストリアル・メタルを核としている。これは欧州の1990年代のインダストリアルの特徴でもある。霧散したハズのEBMは要を保ちながらもよりトランスを深めていくことにより生き長らえていたのだ。
1990年代におけるEBMの萌芽。サイケデリック・トランスとエレクトロニック・ボディ・ミュージックが交差するとき……。お薦め。

Prager Handgriff - Arglistige Taeuschung

Arglistige Taeuschung

Arglistige Taeuschung

またしてもドイツのEBM/インダストリアルレーベル「Infacted Recordings」の名物企画「EBM Kult Klassiker!」より一枚。
この二人組はドイツでダーク系EBMスタイルの音を作っているようで近年も盛んに活動してるよう。で本エントリはそのデュオの1stに当たる(そこへ初期のデモ・テープ二枚分の音源を足したもの)。
カルトシリーズの名に恥じないクソ重きダークボディ!それもスキニー・パピー系のドロドロで攻めるわけでもなくひたすらフィジカルに攻めまくる正に「エレクトロニック・ボディ・ミュージック」。体調が宜しくないと息切れを感じる程に熱き魂が満載!
インダストリアル・メタル?トランス?と全く気にかけていないようなドイチュ謹製の䧺度満点エレクトロ・ハンマー・ビート&メタパーを暴力的なまでに連打の上をダークシンセにアシッド・ベースを絡ませ、ヴォーカルがこれまたドイチュするわけ。凄いわ。初期のボディ及びインダストリアル色の強かったニュービートがトランスへ移行せずくすぶっているとかようなまでに濃い音が出てくるのだ。当時はレザー・ストリップとかと比較さされたのでしょうか?とかくダークというと落ち込んで行く様な音を期待する向きいるだろうが、この二人組に至っては超アグレッシヴ!
冒頭に書いた通りカルトEBMシリーズに恥じない一枚。レザーストリップ、X Marks The Pedwalk、Orange Sectorが好きな向きは買ってみるといいだろう。