Schnitt Acht - Slash And Burn

Slash and Burn

Slash and Burn

アメリカのEBM/インダストリアル・メタルバンドの2nd。
ミニストリーナイン・インチ・ネイルズなどの成功によりインダストリアル・メタル(及びロック)は一大ムーブメントとなって、雨後の竹の子のように眷属バンドが出現。おれらもインダストリアルで売れたいわい、とメタルバンドも打ち込みやデジタル・リフ、インダストリアル・ノイズを取り入れる様が見れたり、聴けたりした1990年代前半。
このバンドもその眷属だと思うが、かなりエレボディよりの展開でメンバーの経歴を調べたところ、メンバー三人の内、二人がハウス、テクノ系の音源を出してました。やっぱりね。なのでメタリックなギターを多用してますが、ミニストリーのそれとは大きく違っていて、フロント242の6th、7thのメタルギターの比率を多くしたような音になってる。またスキニー・パピーっぽいどろどろとしたメロディも印象的。
元々、ニュービート、EBMを作ってた人がインメタシーンの盛り上がりに対応したような感じ。如何にもメタルっぽい↓のMVもそういう畑違いの人が無理くり演ってるみたいなシュールさがありますね。エレボディ好き、初期NINが好きな向きにもお薦めしたい一枚。

Brigade Werther - Killbeat

Killbeat

Killbeat

ドイツのEBMバンドの12inchに未発表曲を集めたコンピレーションアルバム。例のEBMカルトクラシッカーシリーズ第27弾!
所謂フロント242タイプのサイバー・パンクなEBM。でもこの時期のZoth Ommog(オリジナルはこのレーベル)らしく、ニュービートっぽさもあり単なる眷属バンドで終わらない出来になっているのは、カルトクラシッカーシリーズに選ばれることだけはある。
この1980年代後半のZoth Ommogが出していたニュービートは他のアシッド・ハウス色が強いものとは違って、EBM直系のインダストリアルビートものとなっており、そのアシッド・ハウス色が薄いことから、後のゴア、サイケデリック・トランスの直系と見ても良い気がする。まぁ個人的な観点だけどさ。
しかし、このZoth Ommogが後にトランスへと移行しなかったことは前にも何回かブログで書いた。それだけにかようなZoth Ommog印のニュービート音源は貴重。後のトランスへの道しるべを聴くことも出来、同時にボディとニュービートの曖昧な境目も聴くことが出来て身震いが来るほどに、オレによし、うん、よしなコンピ。
ベルジャン・ニュービート……このジャンルは(当時、流行ったのにも関わらず)この国での文献は少ない。自分もその手の1990年代初頭のコンピを集めたりしているが、入手には困難を極めている。なのでこの再発は天啓に等しい。ニュービートを好む向きのみならず、フロント242を好む向きにもお薦めしたい一枚。

à;GRUMH... - We Are à;Grumh... And You Are Not!

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ベルギーのEBM/インダストリアルバンドの6th。
ベルギーといえば、フロント242、ネオン・ジャッジメントらのエレボディ系バンドが多くいたところで、その牙城となっていたのがレーベル「Play It Again Sam Records(以下:PIAS)」。
「西のWax Trax!、東のPIAS」と呼ばれ、両レーベルでグローバルにエレボディを展開していた……のだったのだが、僅か三人ばかりのメインスタッフでPIASは運営されていたようで、そのバイタリティには感服せざる得ない。ちなみに現在も同レーベルは稼働中のようだ。
本エントリで紹介するバンドも所謂PIASのエレボディ一派。でもフロント242ほどサイバー・パンクでもなく、ネオン・ジャッジメントほどジョイ・ディヴィジョンでもない音でなんだか中途半端だが、両者を繋ぐ面白い存在とも聴こえ、無視することは出来ない。あともう少しポジティヴ・パンクならカサンドラ・コンプレックスにもなってしまう趣。流石、層の厚いPIAS、様々なエレボディ系な存在がいたようだ。またエイドリアン・シャーウッドのいないパンコウとも表わすことが出来るだろう。朴訥、素朴な雰囲気も感じることが出来る。
イタロ・ボディ、ベルジャン・ボディの狭間に存在するようなアルバム。改めてこの時期の「エレクトロニック・ボディ・ミュージック」の面白さを感じる好盤。昨今、EBMカルトクラシッカーシリーズを出している某レーベルからもそのシリーズでデジタル・リマスタ盤が出ているようなので案外見つかり易いかもしれないし、アマゾンでも扱っているようだ。お薦めしたい。


Delerium - Syrophenikan

Syrophenikan

Syrophenikan

Front Line Assembly(以下FLA)のビル・リーヴとライズ・フルバーによるユニットの3rd。
このユニットは本家のFLAよりも知名度が高くて、あるアルバムなんかは数百万枚もの売り上げを記録してる。なので知ってる人(主にトランス・ヘッズ)は多いだろうが、このアルバムはその知ってる人でも、聴いたことがないような内容。
FLAはスキニー・パピーに居たビル・リーヴが結成したエレボディ系のバンド。初期はキャバレー・ヴォルテールポーション・コントロールを思い起こさせるようなひんやりとした色調のボディだったが、その後はインダストリアル・メタルなどを取り入れて独自の方向性を得ている。
このDeleriumはFLAが結成された後に結成されたユニットだったが、1stの発表が1988年なのでFLA立ち上げ直後といった感じか。1stは実験的なダーク・アンビエントSPKの3rdやルストモード、ソヴィエト・フランスを思い起こさせた。
このアルバムもその路線だが、よりメロディアスによりトライバルなビートにインダストリアルなビートも強調されている。それは同時期のムスリムガーゼやエスプレンドー・ジオメトリコを思い起こさせる、インダストリアル・エスノだが、ムスリムガーゼのような中東的なメロディは聴こえてこない。似ているのはテスト・デプトの「Terra Firma」、「Materia Prima」だろうか、ケルト音楽にメタル・ジャンクを融合させた訳の分からない音だったが、このDeleriumの「Syrophenikan」に似ている。そこによりトランシーさを加えた……と評すれば適当なのかもしれない。
そう聴くと、ベルギーのEBM系レーベル「KK」から出ていた、Psychick Warriors Ov Gaiaの音源に一番近いのかもしれない。そのトライバルでトランシーな音は後のゴア、サイケデリック・トランスに繋がってくる音だったが、このDeleriumの3rdも同じ系統だ。
トライバル・トランスの萌芽がここに……。次のアルバム「Stone Tower」ともに初期Deleriumの傑作。ゴア、サイトランスを聴く向きもルーツの一つとして聴いてみるのもいいだろう。

KMFDM - Symbols

Symbols

Symbols

ドイツのインダストリアル・メタル系バンドの9th。
四枚目の「Naïve」からメタル・ギターを全面的に取り入れて所謂「インダストリアル・メタル」ないし「インダストリアル・ロック」としてミニストリーナイン・インチ・ネイルズらと共に注目されるようになり、その路線は以後も続いていくのだけど、その路線は7枚目の「Nihil」で頂点を迎えたように自分には聴こえる。その次のアルバム「Xtort」ではデジタル・ハードコアばりの高速ブレイクビーツを取り入れたりして、明らかにインダストリアル・ロックから脱却しているように思えた。
このアルバムはその「Xtort」で魅せた実験的な方向をより推し進めたアルバムだろう。全編に亘り野太いエレクトロニック・ビートにアシッドなデジタル・リフ。特にデジタル・リフはTB-303の多用が目立ち、当時台頭していたアシッド・トランスやデジタル・ロックの影響が見て取れるような鳴り方で面白い。またスキニー・パピーから二ヴェック・オーガ、PIGのレイモンド・ワッツなどが参加し、豪華な布陣も魅せている。
しかし、デジタル・ロックのそれにはならないのはやはり「Wax Trax!」出身。圧倒的にエレボディしてしまう。(1990年代後半の)プロディジーとディー・クルップス、リヴォルティング・コックスの間を何で埋めたらいいのかと訊かれたなら、迷わずこのアルバムを挙げるだろう。お薦めの一枚。

KMFDM - Rocks (Milestones Reloaded)

ROCKS-MILESTONES RELOA

ROCKS-MILESTONES RELOA

ドイツのインダストリアル・メタル系バンドの再録、リミックスを集めたベスト盤的コンピレーションCDに30周年記念ライヴの模様を収録したDVDが付いたもの。
1980年代後半の所謂「エレクトロニック・ボディ・ミュージック」の隆盛とそのシーンを作った米国のレーベル「Wax Trax!」から出していたことからその一派として扱われるも、微妙な評価だった。しかし、1988年にミニストリーが「インダストリアル・メタル」を確立させ始めた頃から、このKMFDMもその時流に乗り、徐々に評価を上げていった。挙句、チャートにも顔を出すほどの存在に成り上がった。
しかし、KMFDMがミニストリーらのインダストリアル・メタルと違っているのは、やはりエレボディだろう。ディー・クルップスと同じく、重たいエレクトロニック・ハンマービートにスラッシュ・ギターを乗せることで成り立っている。ノイジーなスラッシュ・メタルのミニストリーとは趣が全く異なっている。その点で未だに「Wax Trax!」色を残している稀有なバンドなのかもしれない。特にここ数作はエレボディ回帰が著しく、直線的なハンマービートにびりびりとしたシンセ・ベースが強調されている。
このベスト盤もその路線が多くを占める。まぁ近作の曲が多く収録されているのでしょうがないが……。再録またはリミックスも(A Drug Against Warを除いて)デジタル・リフを前面に推しだした音に仕上がっており、1990年代前半のスラッシュ・メタルを求める向きにはお薦め出来ない内容。
最近のディー・クルップスとともにハードロックなシーケンスを持った古き良き「エレクトロニック・ボディ・ミュージック」を聴かせてくれる。と同時に最近のブロステップ、ロッキンなエレクトロをも取り入れている好盤。

Xao Seffcheque – Sehr Gut Kommt Sehr Gut

Ja,Nein,Vielleicht kommt sehr gut

Ja,Nein,Vielleicht kommt sehr gut

オーストリア出身のアーティストによる1st。オリジナルは1981年発表。デジタル・リマスター盤ですね。
半裸の渋い、イイ顔したおっさんがギターを持って煙草をふかしている……。そんなジャケから想像する音はブルースやフォークだろう。
しかし、そんなイマジンを上条パイセンの如くブレイクしてくれるのがこのアルバム。どうやらディー・クルップス、アインシュテュルツェンデ・ノイバウテンらを輩出したレーベル「ZickZack」からもこのおっさんは出してたようで、そんな「あっ……」と呟いてしまうようなお察しが産まれてしまう狂気のジャーマン・ニューウエィヴサウンドが満載の一枚。
その朴訥とした狂気はデア・プランのヴィジュアルイメージや音に近いが、半裸の渋いジャケが物語るようにエレボディ色が濃いい。ガビ・デルガドのソロ・アルバム「Mistress」はレザーを脱ぎ捨てて、アロハシャツのガビが写っているジャケが印象的なようにトロピカル・サウンドが全編に亘って流れていたが、硬くアシッドな音は健在だったように自分には聴こえた。
このアルバムはそのガビのソロ「Mistress」から南国的なイメージを抜いて、よりアシッドな音を追求したような……といえば伝わってくるかもしれない。
DAFとガビのソロ「Mistress」の間にある欠けたピースを埋める様な音楽。全く製作者にサイコ・ダイヴをしたくなるような狂気のみのアルバム。クソお薦め。