V.A. - The Sound Of Belgium Vol. 2

Sound of Belgium Vol.2

Sound of Belgium Vol.2

このコンピレーションアルバム4枚組は所謂「ベルジャン・ニュービート」と呼ばれていたものが殆どを占めている。やっとこういったジャンルの見直しも始まったということだろう。
元々ベルギーは1970年代後半からテレックスというエレクトロ・ポップグループが居て、同時期に世界各国から出てきた同じようなバンドやグループともにシーンは栄えていたよう。しかし、その後、この手のジャンルが衰退していって生音指向に戻って行った。
が、ベルギー(とその周辺国)だけはエレクトロニックに拘った音を量産し続けていた。代表的なグループを挙げるとするならフロント242だろう。クラフトワークDAFに影響されたフルエレクトロニックな音楽は当時、時代錯誤とされ日本のある中古盤屋ではフロント242のシングルが投げ売りされていたそうだ。
しかし、愚直にも長く続けていれば日の目を見るのだろうか。1980年代後半にもなるとアメリカのシカゴやニューヨークを端としたハウス、アシッド・ハウスが欧州で猛威を振るい始め、同時に「エレクトロニック・ボディ・ミュージック(以下EBM)」も猛威を振るい始めた。
そして、ベルギーにはその猛威を更に猛威とさせることが出来る土壌があった。そうフロント242(彼らはそのEBMというジャンル名の提唱者でもある)を始めとするEBM勢だ。1980年代半ば前後には見向きもされなかった音が表舞台に舞い降り、そして雨後の竹の子のようにレーベルが増えた。しかもその雨後に産まれたレーベルはフロント242を始めとするEBM勢よりもダンサブルでダンスフロア向けを中心とした音だった。それは猛威を振るっていたアシッド・ハウスの影響だろう。EBMをベースによりドラッギーでよりトランシーな音作りをしていた。そしてそれこそが「ニュービート」と成る。
周辺国もそれに乗り、特にドイツのエレクトロニック・ダンス系のレーベルはその殆どが「ニュービート」レーベルだった。ケン・イシイを輩出したR&Sが有名だろう。R&Sは当時ベルギーに多くあったそれと同じであったが、1990年、同レーベルから出たジョーイ・ベルトラムの「Beltram Vol.1」はニュービートをハードコア・テクノに発展させた。その後もベルトラムは「音の暴力」としか形容出来ない音を量産していく。特にオランダのハードコア、ガバの雄ポール・エルスタックとのユニット「Hard Attack」は極限までその暴力性を高めた傑作だろう。また同レーベルのCJボーランドといったアーティスト達がニュービートをトランスへと発展させてもいく。
このコンピは今まで書いてきた、ニュービート黎明期からハードコア移行期、移行後、トランス前夜までの道のりを聴くことが出来る。でも一枚目はテレックスなどのニューウェイヴものも収録されているのでニュービート前夜まで聴くことが出来てしまう。
今までこの手の音聴きたければ、ブックオフなどで「テクノ」や「アシッド」という題名の付いた1980年代後半のものを発掘する、ないし動画共有サイトなどのネットでしか聴くことが出来なかった。しかし、このようなコンピが新たな形でまとめられたのは快挙だろう。興味を持たれた向きは一聴してみては如何。