Peter Rehberg - Work For GV 2004-2008

Work for Gv 2004-2008

Work for Gv 2004-2008

Megoなるレーベルを主宰する英国出身のPeter Rehbergによる2004から2008までの音源を集めたコンピレーションアルバム。
このMegoなるレーベルはFenneszとかを出してて「エレクトロニカ」レーベルだと私は認識しとったのですが、Megoレーベルのカタログを眺めているとBruce GilbertとGraham LewisのDomeとそのBruce Gilbertのソロ、パン・ソニックのMika Vainio、Prurient、そしてKTLらが作品を出しており、認識を改めなくてはいけないようだ。
自分はこのPeter Rehbergという人の音は某メタル雑誌のクロスレビューで栄えある4点を記録したSunn O)))のStephen O'Malleyとのタッグから成るKTLだった。この名義では1980年代のホワイトハウスを思い起こさせるようなギターのフィードバックノイズからのハーシュ・ノイズにエレクトロニカでトランシーな電子音が絡むというネオ・パワーエレクトロニクスと呼びたいくらいの驚きを聴かせてくれた。静から始まって徐々にギターのフィードバック・ノイズとエレクロニック・メロディがブーストしてくる震えが来るほどにドラマチックな展開は2000年代半ばのエレクトロニカシーンに於いては異端しか感じなかっただろう。この音をメディアではKTLをドローンとかブラック・メタルと表わしていた。
この名義でもノイズ・インダストリアルは健在。KTLほどではないがハーシュ・ノイズを聴かせてくれる。というよりもKTLからギター・ノイズを引いた感じといえば伝わるだろうか。そう書くとヴォリュームが足りない音だと思う向きがいるだろうが、そんなことはなく、よりメロディアスでドロドロとしたダークさが強調され、かつクリアな音で魅せてくれる。デス・イン・ジューンやカレント93がエレクトロニカを演っているような音だ。
エレクトロニカとインダストリアルの中間で橋渡し的なものに仕上がっていて、エレクトロニカ、インダストリアル、どちらの向きにもお薦めしたい一枚。勿論KTLを好む向きにもお薦めだ。

Borghesia - Dreamers In Colour

Dreamers in Colours by Borghesia (1991-05-03)

Dreamers in Colours by Borghesia (1991-05-03)

ユーゴスラヴィアEBM系バンドの7th。
ライバッハと並んで旧ユーゴのインダストリアル及びEBMシーンを盛り上げたバンド……といってもこの国は(アンダーグラウンドだけど)多くのインダストリアル系バンドがひしめいており、本エントリで紹介するバンドはその代表みたいなものだ。フロント242、ネオン・ジャッジメントらがいた大手の「Play It Again Sam Records」、略してPIASから出していたので西側たるこの日の出国でも入手できることがその代表たる証左。
しかし、このバンドはライバッハと比べると割とストレートにエレボディしている感じ。しかも後ろにポジティヴ・パンクがあるような。隣国のイタロ・ボディのパンコウなんかにも近い朴訥としていてハード・ロッキンなボディ・ミュージック。まぁMVやジャケのデザインを眺めていると割とポリティカルなメッセージを訴えているのだけど。
あとこの頃にしては珍しくエレボディ。前作はハウスやヒップホップの影響があったりしたけど、本作は前述した通りハード・ロックなシーケンスを多用する「エレクトロニック・ボディ・ミュージック」。クラフトワークをサンプリングしたりしてるのもまたそれを際立たせる。またアンビエントな曲は1980年代後半のザイモックスやキリング・ジョークみたいだ。
パンコウやクリニックなんかの素朴かつ朴訥としたエレボディ好きは必聴の一枚。アマゾンでは高値がついているがディスク・ユニオンで見つけることが出来ればそんなに値が張ってはいないと思うので探してみて欲しい。

Indus Bonze - 土着

土着: Dotyaku (Native)

土着: Dotyaku (Native)

日本のアーティストの1st。
ここ5年で所謂1980年代の「ノイズ・インダストリアル」な音をクラブミュージック、つまりダンスミュージックで実践するものが見受けられるようになった。このアルバムもそういう流れから産まれてきたのかは解らないが昨今の(ダンス音楽における)「インダストリアル・リバイバル」に当てはまるだろう。
ここで前述した1980年代の「ノイズ・インダストリアル」について書きたい。このジャンルはスロッビング・グリセルのジェネシス・P・オリッジが立ち上げた「インダストリアル・レコーズ」や彼の発言から勃興したジャンルで、その初期は後にパワー・エレクトロニクスと呼ばれるようなパンキッシュでノイジーなものが多く、折からの「ヘイト&ウォー」と同調するようなジャンルだった。
しかし、1980年代を過ぎるとキャバレー・ヴォルテールを筆頭によりダンサブルでポップな聴きやすい音を目指すようになっていく。がホワイトハウス、ラムレーなどはその流れに反発して旧来のパンクテイストのノイズつまりパワーエレクトロニクスを作り上げる。サイキックTV、テスト・デプトらもキャブスの流れに乗り、踊りたくなるようなかつポップなインダストリアルへと移行していった。
このアルバムの話に戻ると、その各々のインダストリアルバンド達がダンサブルな音に移行しようとしていた過渡期的な音をフィーチャーしたアルバムに自分には聴こえる。そこに2000年代のブレイクコアやゴルジェを足した様な音だ。SPK主宰の「サイドエフェクト」から出していたハンティング・ロッジ、アラブ音楽とインダストリアルの融合を試みたムスリムガーゼ、同じく中近東の音を取り入れていたエスプレンドー・ジオメトリコなどのトライバルなノリを暗黒的なインダストリアルに注入していた1980年代半ばから1980年代後半の音にこのアルバムは近い。またエレボディ系レーベル「KKレコーズ」にいたサイキック・ウォリアーズ・オヴ・ガイアのトライバルな音像にもまた近い。
タイトルが「土着」とはよく言ったもの。怪しげな民族インダストリアル・ダンスに震えが来る。ここ最近の新譜ではベスト!買え!以上!

AA= - #5

#5 (初回限定盤)

#5 (初回限定盤)

THE MAD CAPSULE MARKETS上田剛士によるプロジェクトの5th。
自分はこのアルバムしか持っていなく、かつ過去のアルバムを聴いていないので過去作がどういうことなのかが解らないが、このアルバムは凄いっす。インダストリアル・メタル、ブレイクコア、ガバ、デジタル・ハードコア、果てはデジタル・ロックまでありとあらゆる「煩い電子音楽」が満載。
MAD CAPSULE MARKETSは全部を聴いてきたわけではないが、デジタル・ハードコアやジャングルといったジャンルをロックと融合させていた。しかし、このプロジェクトは更にうるさきガバ、ブレイクコアを取り入れることで更なる高みを魅せてくれる。またフィアー・ファクトリー、バーサーカーといったインダストリアル・メタル以降のメタルをも取り込んでいるのが恐ろしい。フィアー・ファクトリーのミニストリーのインダストリアル・スラッシュを極限まで拡大した無機質な音楽、バーサーカーデス・メタルとオランダ・ガバをミックスして狂気しか感じない音楽……。
この各ラウド・エレクトロニック・ミュージックを取り入れながらも一貫した音にはゴッドフレッシュのジャスティンの各プロジェクトを思い起こさせる。ハードでうるさい電子音楽を好む向きは必聴のアルバム。買え!以上!

E-Craft - The Roots

The Roots

The Roots

ドイツのEBMバンドのベスト盤。昨日に引き続き「EBM Kult Klassiker!」シリーズ。
ドイツのエレボディといえば真っ先に挙がるのがDeutsch Amerikanische FreundschaftことDAFだろう。このバンドもご多聞に漏れずDAFなのだけど、それで終わらすにはもったいないのでもう少し書いてみたい。
所謂「エレクトロニック・ボディ・ミュージック」を作り上げたのが冒頭にも挙げたDAFだが、もう一つ挙げたいのがディー・クルップスだ。ディー・クルップスはDAFと比べると旧来のバンド形式なので音数も多く、(音数を)削ぎに削ぎ落としたDAFからすると趣が異なる。メタル・パーカッションやインダストリアル・ノイズを多用した音作りは比べるなら同じくドイツのEinstürzende Neubautenが最適だ。
しかし、ディー・クルップスの1980年代の音源を聴けば解ると思うが、ノイバウテンのそれとは違いダンサブルかつグルーヴィーに疾走していく「エレクトロニック・ボディ・ミュージック」なのだ。DAFノイバウテンを融合させたのがディー・クルップスなのかもしれない。
盤の紹介に戻ると、前述した通りDAFなボディ・ミュージックなのだが、1980年代のディー・クルップスでもある。というかクルップス色の方が強い。この時期(1990年代半ば)のクルップスは1990年代初期からの「インダストリアル・メタル」に傾倒しており、様々なスラッシュ系のメタルバンド達とコラボするなど以前の彼らからは推理することが出来ないバンドになっていた。
このバンドはその空いたポストを埋める様なポスト・クルップスだ。しかし、デペッシュ・モードを思わせる様な艶めかしく哀愁のあるエレクトロ・ポップスを挿し込んでくるなど、只のクルップスフォロワーに留まらない音を魅せてくれる。
メタル・パーカッションに性急なエレクトロ・ハンマー・ビートの上をうねるアシッド・シンセ・ベースに陶酔感あるシンセメロディが疾走し、それに合わせてヴォーカルが吠える……そんなニッツアー・エブ、(1980年代の)ディー・クルップスが好きな向きは必聴の一枚。お薦め。

Pankow - Kunst Und Wahnsinn

Kunst & Wahnsinn

Kunst & Wahnsinn

イタリアのEBM系グループの12inchやコンピレーション収録曲、そして未収録曲を集めたコンピレーションアルバム。またしてもInfacted Recordingsによる例のシリーズこと「EBM Kult Klassiker!」。
このシリーズを俯瞰してみると、どうやらZoth Ommogのバックカタログを再発してるみたいね。Infacted Recordingsを主宰しているTorben SchmidtはZoth Ommogで幾つかの名義で作品を発表し、また同レーベルのA&Rマネージャーも務めていた人なので、そのことから権利を持っているのだろう。そういう意味でこのシリーズは100%Infacted長の趣味なのだが、この手のジャンルがどこから来たのか、というこのジャンルを愛していることが伝わって来て頬が緩む。誰かがまとめ上げないと、本当に埋もれてしまうジャンルなのだから。
このイタロ・ボディグループはアメリカではWax Trax!、欧州では地元イタリアはフィレンツェのContempo Recordsから音源を発表していたのだが、ドイツのZoth Ommogからも出してたようで晴れて「EBM Kult Klassiker!」シリーズに入れた模様。
この頃の彼らはシーンの台頭と共に出す作品その全てがハイクオリティで捨て曲無という恐るべき猛威を振るっていたその様をダイジェストに収録って趣のコンピ。ホント、素晴らしいです。バックにはON-Uの長も務めながら数多のエレボディ系のPちゃんやエンジニアも手掛けていたエイドリアン・シャーウッドを迎えて、性急にドライヴするハードコア・ダヴを存分に魅せてくれる。
エレボディを好む向きは必聴の一枚。買わないと!激鬼マストバイ

Einstuerzende Neubauten - Haus Der Luege

Haus Der Luge

Haus Der Luge

ドイツのインダストリアルバンドの5th。
個人的にノイバウテンの最高傑作だと思う。メタル・パーカッションを用いるバンドは数多いが、このノイバウテンが同系統の音に圧倒的な差を魅せつけるのはロックン・ロール的なダイナミクスだろうか。いってしまえば解り易くアヴァンギャルドな音を聴かせてくれるところだろう。ポップにノイズ・インダストリアルを表現したところにノイバウテンの魅力がある。
このアルバムはそのポップな部分を拡大したようなもの。どのアルバムよりもポップスでロックンロールだ。しかもインダストリアルな部分は保つどころか大爆発している。正にインダストリアル・ロック。しかし、ナイン・インチ・ネイルズとは全く趣が異なるのが面白い。どちらかと言えばフィータスに近い。その点でやはりロックンロールしている。
短い紹介文になってしまったが、彼らのアルバムの中では一番ポップでロックでメタル・パーカッションだ。特にフィータスの「Thaw」が好きな向きは持ってないと可笑しい位に必聴!ちょう傑作!買え!以上!