Borghesia - No Hope No Fear

No Hope No Fear

No Hope No Fear

ユーゴスラヴィアEBM/インダストリアル系バンドのミニアルバム。
今までのエントリーで何度かEBMシーンについて「80年代後半になってやっと電子音楽が世界的に普及した」と書いた。それをもうちょっとよく掘り下げて(まぁ半可通の非常に浅い掘り下げだけど)書いてみたい。
これまではUK・独・日(その他の先進国の各都市)ニューウェイヴが海に投げ捨てられ、岸に揚げられた漂流物の形で第三帝国に根着いた。しかし別の側面で見てみると電子楽器の値段が格段に下がったり、使い易くなったからでは?という見方もできると思う。70年代後半には中流階級の人間がどんなに働いても(または研究機関に所属していなければ)買える値段では無かった。あのYMOの人達が電子楽器をポンっと買えたのはあの人達が既に音楽家としてキャリアを積んでいたし金回りが利くメジャーレーベルにいたからだと思っている。また単純に(特に坂本龍一)上流階級に属していたから、という知れば知るほど「テクノ・ポップ」というムーブメントは「夢が無い」ものだった。当時フルセットで一億円したサンプリングマシンことフェアライトが買える人間がどういう仕事に就いていてどんな階級に属しているかなんてのは低能の自分でも解ってしまう。
しかし80年代半ばにもなると、日進月歩により発売当時には目が飛び出るほどの値段も落ち着き、進化により打ち捨てられた古い楽器がちょっとバイトでもすれば買える時代になってしまう。これによりアメリカでは演者の大半が労働者階級かつ黒人だったエレクトロ、後にアシッド・ハウスというジャンルが立ち上がる。こんな事実はこの界隈の音楽をちょっとでも聴いている人間には解りきったことだと思う。
そしてこれは80年代後半の第三帝国EBMシーンにも当てはまるのではないだろうか。例を挙げるとフロント242のダニエルとパトリックが1991年発行の「銀星倶楽部」でこんなことを発している。
ダニエル「1981年以前は音楽には関わってなかったけど、テクノロジーが音楽への興味を持たせてくれた。安いシンセのおかげで皆音楽に入っていったんだ」
パトリック「日本製の安いシンセ(笑)」
音源を全く紹介していないが、http://d.hatena.ne.jp/moistly/20110220/p1で代用できるとおもうのでそちらを読んで欲しい。お薦め。本エントリに張ってあるのはMP3になっているがCDでもまた再発して欲しいと思った。