Whitehouse - Great White Death

Great White Death

Great White Death

イギリスのパワー・エレクトロニクス、インダストリアルバンドの1985年発表のアルバム。
このバンドはキャバレー・ヴォルテールやスロビッング・グリセルの影響を受けた所謂「第二世代のインダストリアル」なんだけど、そのインダストリアルにある、より過激な方向を追求したバンド。パワー・エレクトロニクスというジャンルの創始者でもあるようだ。で、そのハードコアさから様々な問題を起こし(それらの逸話を良い子は調べないように!)、仕舞には殺害予告まで出されるというオチ。曰く「ネ〇ナ〇野郎!〇〇至上主義!!女性の敵!!!」という受けたくもない三重苦を背負う始末。
このアルバムは前述した「殺害予告」で国外逃亡した後、ほとぼりが冷めた頃を待って(待ったのかどうかは知らないが……)発表した復帰作。
でも、復帰前と変わらず全編に亘って工事現場みたいなノイズをバックに程度の低い不健全なことをシャウトするという「まるで進歩が無い……」アルバム。しかし、初期キャブスやSPKから知性を根こそぎ取ったような白痴インダストリアル・サウンドは彼らにしか作れない(そして作りたくない)清々しさを感じる音だろう。
覚えたての猥褻な言葉や差別的な言葉を絶叫するような小学生マインドが横溢するインダストリアルが此処に……。とてもじゃないがディスク・ユニオン等で数千円、または数万円出すアルバムじゃないのでブックオフの500円、280円棚で探して買いましょう。そんな値段が似合うアルバム!クソお薦め!

STG - No Longer Human

No Longer Human

No Longer Human

アメリカのインダストリアル系ロックバンドの1st。
ドイツのインダストリアル・ロック、エレボディ系レーベルZoth Ommogのコンピに参加していたバンドで、その熱く歌い上げるディー・クルップス系のドイツ的エレボディスタイルが気に入ったのですが、アルバムを出していたよう。しかも邦盤!
日本のライターが書いた解説文にはミニストリーナイン・インチ・ネイルズらと同バンドを比較しているが、前述した通りディー・クルップス系のそれ。ハンマー・エレクトロニック・ビートの上を直線的なギターやうねるシンセベースが疾走し、熱きシャウトが横溢しているメタル・ボディ!
……が、9曲目が何故か初期コントロールド・ブリーディングなハーシュなパワーエレクトロニクスになっていて(後半はデス・イン・ジューンな暗黒ネオ・フォークに……)、コンピだったのか?と思うけど、同バンド。もしかして、本来はこういう音を演りたかったのかな。
アメリカのインダストリアル系ロックバンドにしては珍しく独EBMスタイルが濃い。ディー・クルップスの「Ⅱ」、「Ⅲ」が好きな向きは買ってみると面白いかも。

Belfegore - Belfegore

Belfegore (Deluxe Edition)

Belfegore (Deluxe Edition)

ドイツのポジティヴ・パンクバンドの2nd。
昨日のエントリで思い出したコニー・プランクEBM仕事の一つベルフェゴーレのナイスリマスタ盤を紹介。なので勿論Pちゃんとミックスはコニー・プランク。しかも全面的にPとミックス。
あのEBMの始祖Deutsch Amerikanische Freundschaft、それに続く形でトミー・シュタンプを手掛けていたコニー・プランクはそれ以外でもユーリズミックス、ウルトラヴォックスといったUKのメジャーどころのバンドも手掛けていた。あとキリング・ジョークとか。
しかし、前者が割と好きなようにやっていた様に聴こえるのに対して後者はガチガチな仕事している様に聴こえた。このベルフェゴーレは前者と後者の境目にあるような音だろうか。冒頭のシンセベースとハンマービート、その上のサイケなギターリフが疾走する曲は一聴すると抜けのイイ、メジャー感があるハード・ロックンロールだが、もう一聴きするとハンマー・ビートとシンセベースの鳴りがDAFのそれにしか聴こえないという。
前述したように1980年代前半にキリング・ジョークのP仕事をしたコニー・プランクだったが、バンド、Pとの噛み合わせが悪く、終始消化不良を起こしていた。しかし、このアルバムではバンド、P双方で上手く噛み合っている。ゴシック・ロック(またはポジティヴ・パンク)とDAFが高いクオリティで融合している。コワルスキーといい本国のアーティストやバンドのPはメジャーでもイイ仕事をしているコニー・プランクは。
キリング・ジョークDeutsch Amerikanische Freundschaftの融合。1990年代のインダストリアル・ロックのひな型が此処に……。

Arno Steffen - Schlager

シュラーガー(Schlager) [CD:SSZ-3037OD]

シュラーガー(Schlager) [CD:SSZ-3037OD]

ドイツのアーティストによる1st。
1980年代半ば、フェアライトなるサンプリングマシーンの登場により音作りに相当な変化をもたらしたようだ。それはアート・オブ・ノイズを聴くまでもなく……。
このアルバムもそのサンプリング・マシーンをフルに使い……という訳では無く、自作のサンプラーを全面的に使い倒しているそうだ。凄い!……が買う金が無かったのだろうか、フルセットで一億円もしたらしいし。ちなみにあのコニースタジオで使い倒したそうです。勿論、コニー・プランクが全面的にバックアップ。
サンプラーを前面に……といってもアート・オブ・ノイズになっているわけでもなく、コニー・プランクP仕事のDAFやトミー・シュタンプを思い起こさせる、所謂「エレクトロニック・ボディ・ミュージック」に仕上がっている。てか、まんまトミー・シュタンプ。
ノイエ・ドイチェ・ヴェレなスチャラカで素朴なメロディが流れつつも、メタル・パーカッション、硬質なエレクトロニック・ビート、ライバッハを思わせる荘厳で扇情的なオーケストラ、独語シャウトが横溢しており、どうにもEBMを演じてしまうのはコニー・プランクPの所為なのだろうか。またコニーP(のEBM仕事)の繋がりであろうコワルスキーやベルフェゴーレのメンバーも参加。どうりでエレボディになってしまうわけだ。
まだまだ1980年代のノイエ・ドイチェ・ヴェレ系の音源でヤバいのはあるぞ、というが自覚できたアルバム。そんな音源を再発したSuezan Studioには尊敬の念しか覚えない。トミー・シュタンプ好き、フィータスが好きな向きは買って損無!買え!以上!

Skinny Puppy - Bites

Bites

Bites

カナダのインダストリアル系バンドの1st。
暑い……。暑いとどうにも漢滴るEBMおよびインダストリアル・ビート系などを聴く気が起きず、アンビエント、ダヴ、トライバル系のトランスものばかり聴いてしまう。
しかし、このアルバムはEBM系にある暑苦しさが希薄で荒涼としたサウンドが続く。ケヴィン・キーは1980年代前半からのエレクトロを取り入れたキャバレー・ヴォルテール(以下:キャブス)やポーション・コントロール(以下:ポーコン)を演りたくて、スキニー・パピーを始めたそうだから、この初期にあたる本作はそれが濃い。
キャブスでいえば「The Crackdown」から「Micro-Phonies」、ポーコンで言えば1980年代半ばのアルバム群となるだろう。インダストリアルでアヴァンなエレクトロに荒涼としたメロディが乗った「ひんやりとした」質感が印象的。
後のケバケバしいまでのノイズと発狂ディストーションヴォイスは鳴りを潜めているが、キャブス、ポーコンの「ひんやり」感を楽しめるのは初期スキニー・パピーだけ!この夏に最適なインダストリアル・ビートもの!

Muslimgauze - Turkish Berlina

Turkish Berlina

Turkish Berlina

イギリスのアーティスト(故人)によるセルフ・リミックス盤。
……なんだけど、盤のどこにもクレジットが無く、どの曲のリミックスなのかを大手DBサイトにて調べたところ、全ての曲が無題でしたとさ……。だから何の表記も無かったんだね!
一応「Sarin Israel Nes Ziona」と「Jah-Mearab」に入ってた曲のリミックスがあるようだけど、「そんな曲、入ってたっけ?」と思うようなリミックス。かなり彼の音源では異色ではないだろうか(だから発表しなかったのかもしれない)。
いつもの中近東なメロディを乗せたダヴやトライバルビートものなんだけど、ジャングル、IDMテイストな曲もあって面白い。フロア向けがあるかと思うとディープなダヴもあったりして、リミックス盤らしく統一感が無い。特に2曲目のダビーな中東ジャングルはこの人にしか作りえない傑作だ。
この人のアルバムはダヴのアルバムならダヴのみ、フロア向けのアルバムならトライバルか四つ打ちのみに統一させてくることが多いので、このとっ散らかった感じは珍しい。
故人ながら(1999年に死去)、未だ定期的に(未発表やリミックス)リリースがある。もう流石に掘り尽くされたと思うが今後も注目すべきアーティストだろう。500枚限定とのことだが、ユニオン各店、中古盤屋で以外にも簡単に見つかったりする。またiTunesにもあったりするので興味を持たれた向きは検索してみるといいだろう。お薦め。

Leæther Strip - The Rebirth Of Agony

The Rebirth Of Agony

The Rebirth Of Agony

デンマークのエレクトロ・インダストリアル系アーティストの6th。
1990年代のEBM系残党の中ではフロント・ライン・アッセンブリーらと並んで活動が盛んだったアーティストの一人。それなりのセールスも上げていたよう。
しかし、もうこの音はEBMというよりもサイケデリック・トランスと呼ぶべき音像でディストーションヴォイスがなかったならインダストリアルにもならない。 このアーティストが居たレーベル「Zoth Ommog」はその初期、1980年代末期当時ドイツとベルギーにあった多くのエレクトロニック・ダンス系レーベルと同じようにニュービートものを出していたが、このアーティストは見事にそのノリを引き継いでいる。初期Zoth Ommogは他のレーベルとは違い、アシッド・ハウス色が薄く、EBM直系のハードでインダストリアル色が濃かった。そのニュービートのダークかつゴシカルな音は後のジャーマン・トランスやUKトランスにも引き継がれたが、インダストリアルを強く残している点で初期Zoth Ommogのそれだろう。
しかし、内に沈み込んで行きながらハードコアにも突き進んで行く様な音像はサイケデリック・トランスとしか形容できない。このアルバムを聴けば、EBMがゴア、サイケデリック・トランスの源であったことは一目瞭然だ。
初期Zoth Ommog的ニュービートとサイケデリック・トランスが交差するとき……。お薦めの一枚。