Skold - The Undoing

Undoing

Undoing

元KMFDM、元Marilyn MansonのメンバーことTim Skoldのソロプロジェクトによる3rd。
泣きのインダストリアル・ロック……と呼びたい出来。このTim Skoldがいた1990年代後半から2000年代初頭のKMFDMは哀愁度が高く、イケイケのダンス・メタルからは離れていて、当時ファンからどういう評価を受けていたのか全く興味があるが。まぁ泣いてます本作も。
泣きのメロディといえばナイン・インチ・ネイルズもキメで入れてくるが、このTim Skoldのそれはクサい。北欧のメタルバンドの泣きのメロディみたくクサい。だから演歌みたいなベタベタが気恥ずかしくなる時もあるが、それが強烈なオリジナリティを発揮しているのが面白い。流石、スウェーデンのヘアー・メタルバンド、「Shotgun Messiah」にいた人は違う。この時のキャリアが活きている。
とはいえ前作の泣きの一手を推し進めたものより、今作はブロステップっぽい歪んだデジタル・リフやちょっと前のびりびりとしたエレクトロを取り入れかつ前面に推しだして来て、異なった趣も魅せてくれる。そういうところからエレボに回帰している近年のKMFDMに近い部分もあったり。でもメロディは哀愁で泣いてるから全体的には(KMFDMとは)違うのだよね。
前作よりもデジタル・リフを前面に推しだして来た「泣き」のインダストリアル・ロック。趣は異なるがナイン・インチ・ネイルズ、KMFDMが好きな向きにもお薦めしたい一枚。今年のベストアルバム!買え!以上!

Project Pitchfork - IO

IO

IO

ドイツのダークウェイヴグループの5th。
ジョイ・デイヴィジョン、バウハウス、その子供達であるサザン・デス・カルト、セックス・ギャング・チルドレン、エイリアン・セックス・フィーンド、レッド・ローリー・イエロー・ローリー、クリスチャン・デス……。
ニューウェイヴはポスト・パンクからポジティヴ・パンク、ネオサイケという「陰気な音楽」を多く産みだしたが、1980年代後半に欧州やUKを襲った「セカンド・サマー・オブ・ラブ」によりメインストリートから姿を消す。その手のレーベルはアシッド・ハウスへと移行したところもあったが、多くは倒産してしまったよう。かといってNW臭がする陰気な音楽を奏でるバンドが消えたわけでもなく、本エントリで紹介するグループがそれ。
このアルバムは1994年発表という時はジャーマン及びUKトランスやデトロイト・テクノが全盛期。当時はどういう扱いを受けていたのかは知らないが、ジオンの残党如くの地下活動だったことは容易に想像できる。
しかし、ダークウェイヴといっても1990年代のトランスを取り入れたエレボ的な展開にゴスなメロディを乗せており、そのような融合を試みることで健在ぶりを示していたように自分には聴こえる。またこの手のジャンルは当時、(1990年代の)インダストリアルやエレボ系のレーベルが熱心に取り扱っていたようで、このグループのエレボのりはそのせいもあるのかもしれない。
NW臭するネオサイケ、ポジパンにレザー・ストリップやアンプスカットを融合させたような音がひたすらに新鮮だ。こういう音がこの時代から飛び出してくるから旧譜漁りが止めれない。これらは自分のライフワークとしていきたいので今後も紹介していくだろう(物凄いゆっくりとしたペースで。こういう音源に対しては焦る必要がないので)。お薦め!

Clock DVA – Buried Dreams

Buried Dreams

Buried Dreams

あのThrobbing Gristleの「インダストリアル・レコーズ」からも作品を出していたイギリスのグループの5th。
とくるならノイズかと思いきやダンサブルなビートが聴こえてくるエレクトロニック・ボディ・ミュージック。しかもこの手のジャンルにおける名盤だと思っている。
元々初期からこのグループはロック色が強く、4thではキリング・ジョークを思い起こさせる、オルタナティヴなロックに同時期のキャブス的なダンス・ビートを取り入れた怪作だった。
本エントリで紹介する5thはその4thから6年程間が空いてかつ冒頭で書いた通りフルエレクトロニックなエレボだ。しかし、よく聴いていると前作のオルタナダンスな味をエレボに取り入れていることに気が付くだろう。キャブスのひんやりとしてダンサブルなのり、初期キリング・ジョークのゴスでトライバルなのり……。そんな妖しげなデジタル暗黒舞踏音楽がアルバム全体に満ち溢れている。またヴィジュアルを埋め尽くす「サイバー・パンク」なノリも見逃せないだろう。歌詞については解らないが、曲名が「ハッカー」だったり「ファイナル・プログラム」だったりとサイバー・パンクが横溢している。
ニッツアー・エブともつかない、フロント242ともつかない漆黒のゴスでサイバー・パンクな「エレクトロニック・ボディ・ミュージック」が此処に……。ちょうお薦め!買わないと!以上。

Missing Foundation - Missing Foundation

Missing Foundation

Missing Foundation

アメリカのノイズ・インダストリアルグループの1st。
1980年代後半、多くの初期ノイズ系のアーティストやバンドたちはダンサブルな音を奏でていた。轟音ノイズはパワーエレクトロニクスに纏められ、ジャンルの立役者たちは前述した通りダンスビートを取り入れ所謂「エレクトロニック・ボディ・ミュージック」や「ハウス」へと移行を済ませていた。
しかし、その一方で旧来のノイズ……というよりもそのノリを受け継いだようなものも出てきた。それが本エントリで紹介するグループだ。当時(1980年代後半から1990年代初頭)このグループのような音を「ジャンク」と、この日本では表わしていた。ハードコア・パンクとノイズが混ざったノイズ・パンクはスワンズ、ゴッドフレッシュ、ビック・ブラック、コップ・ショット・コップ、プッシー・ガロアなどの音がジャンクと呼ばれていた。
一様に速さよりも重みに力を入れた音がUSジャンクの特徴だろう。USハードコアが速さよりも重みを重視していたこととそれは同期する。
そう!所謂「ジャンク」はUSハードコア(パンク)とテスト・デプト、ノイバウテンのようなメタル・パーカッションをガッシャン!ガッシャン!させるインダストリアル・ビートとの融合なのだ。ヨーロッパのインダストリアルビートがアメリカに渡ったことで起きた変化の結果が「ジャンク」なのだろう。まぁそれを初めに実践したのがスワンズだったのだが……。
その辺に転がってるドラム缶を叩いているようなメタル・パーカッションの上を不穏なサンプリング音にノイズ・ギター、重くファンキーなベースライン、そしてディストーション・ヴォイスは君の部屋にニューヨークのスラム街という都市地獄を具現化させる。げに恐ろしき音楽だ。圧倒的!ちょうお薦め。買え!以上!

youtu.be

Kode IV - Insane

Insane

Insane

アメリカのEBM系ユニットの2nd。
エレボディの派生としてニュービートがあったことをこれまでのエントリで書いてきた。しかし、このジャンルについては諸説が幾つかあり錯綜している。が、本エントリではEBM≒ニュービートとしたい。
ニュービートは1980年代後半にベルギー、ドイツ、その周辺国から雨後の竹の子のように出てきた。自分もそれらの音源を集めているが、その殆どが欧州ということで困難を極めている。この日本でも取り扱っていたZYXから出ていたコンピを数枚所持するに留まっている。あとはZoth Ommog、ニューゾーンのコンピを数枚。最近になって再発も進んでいることもあって大分容易にはなっているが……。
このアルバムもそのニュービートだ。しかも珍しくアメリカのユニットからのそれ。言われなければベルジャン・ニュービートと勘違いするぐらいの音になっている。ニューゾーンから出てきそうなニッツアー・エブ、フロント242をサンプリングしてアシッド・ハウスと融合させて一丁上がり!なトラックがアルバムの大半を占める。これではフロント242の人達がニュービートを指して「それは別の側のエレクトリック・ミュージックだと思う」だとか「ニュービートの本当の始まりはダンス・フロアーから来たんだ。事実本当のダンス・ミュージックだし……ただなんかチープで、なんかディスコで踊れるもの、それだけ。内容もチープだし」と散々なことを言うのも無理ないだろう。
だがしかし、このお手軽ぶりが逆に面白い。好きな食べ物片っ端から皿に盛り付けたような、バイキング感漂う音楽。数々のエレボディネタ、アシッド・ハウスネタが飛び交う様がひたすらに心地よい。後に出てくるビッグ・ビートに近い感じもあるが、この狙ってない趣が潔さしか感じないだろう。お薦め。

Spahn Ranch - In Parts Assembled Solely

In Parts Assembled Solely

In Parts Assembled Solely

アメリカのEBM/インダストリアル・ロックバンドのEP。
色々な事象(もう何回も書いたから省略したい)から所謂「エレクトロニック・ボディ・ミュージックは衰退しました」なのだが、それでも幾つかのバンド及びアーティスト、そしてレーベルのお蔭でそれなりに健在だった1990年代。
本エントリで紹介する盤はその残党の一つであった「クレオパトラ」というアメリカのレーベル。チャプターなんちゃら(会社更生法みたいなもの)を喰らって倒産した後、メジャーのTVT傘下になったWax Trax!(再開始後はUKのトランスやハウスをライセンスリリースするレーベルになった)を引き継ぐようなレーベルで(1980年代のWax Trax!と同様に)欧州残党の音源までライセンスリリースしていた。これはかなり重要でアメリカ、カナダ盤の取り扱いが圧倒的な日本では(一部を除いて)欧州盤の入手は困難を極める。なのでアメリカのレーベルがレザー・ストリップなどを扱ってくれることでこの日本でも容易に入手することが出来た。
とはいえクレオパトラはクリスチャン・デス、サザン・デス・カルトといった所謂「ポジティヴ・パンク」まで出していて、それまでのエレボディ系レーベルとは趣が異なっていた。というか世間的にはこっちのゴス方面の方が有名みたいだね。例のインダス本こと「INDUSTRIAL MUSIC FOR INDUSTRIAL PEOPLE!!!」にはL.A.ゴス系レーベル総本山「クレオパトラ」と書いてあったりする。
冒頭にはEPと書いたけど、全十曲で49分というアルバム並のヴォリューム。まぁ内容はリミックスだったりライヴ音源だったりなのだが……。でもかなり充実した内容なので紹介に至った。
このバンドは残党に相応しくリヴォルティング・コックスやフロント242を思い起こさせるような古き良きエレボディを奏でてくれて、うん、よし、オレによし、なのだけど、リミックスされたそれはかなりトランス、それもサイケデリック・トランス、ゴア・トランスな調子で(当時の)流行に擦り寄って来ている。でもそんな調子なのにエレボディ具合が後退することなく、むしろ際立ってるのが不思議。自分が日頃提唱する「サイトランスのルーツはボディにある」が補強された感じ。
フロント242がメタルを取り入れずにそのまま突き進んだらこうなるかも……な趣に満ち溢れたEP。リヴコなファンキーのりももちろん健在。なのでその向きにもお薦め出来る。

Babyland - Decade One

Decade One

Decade One

アメリカのElectronic Junk Punkデュオの1989年から1999年までの音源を編集した盤。
8bitなニッツアー・エブというか……そういう表現を以前にも書いたけど、そう表わすしかない音。1980年代初頭のシンセ・パンクやジャーマン・ニューウェイヴにも近いものも感じるけど、やっぱりエレクトロニック・ボディ・ミュージック。ハードロッキンなシーケンスにメタル・パーカッション、うねるアシッドなベースラインに吠えるヴォーカル……。
所謂ニッツアー・エブ型のボディ・ミュージックは作を経る毎にギターや生音を入れて「単なるロック」に成ったり、またはスラッシュ・ギターを取り入れてこれまた「単なるメタル」や「ミニストリーナイン・インチ・ネイルズの出来損ない」に成り下がることが往々にしてあったりするのだが、この二人組は一貫してボディィィィィィィィィィッッッッ!!!!冒頭にも1989年から1999年とあるけど、どの曲が初期でどの曲が後期なのか、さっぱり区別がつきません!凄い。
そして(これも前に書いたけど)、メタル・パーカッションが「その辺の鉄製(またはステンレスとかの合金)のゴミ箱を叩いてる」ような音で1980年代後半のアメリカのジャンク系のバンド(コップ・ショット・コップ、プッシー・ガロア、ミッシング・ファウンデーション)を思い起こさせる。投げやりな衝動しか感じない金属殴打音がジャンク度を推し進める。また1990年代のAFXリフレックスのような児戯に溢れた音も印象的だ。砂場の悪ガキどもって趣。
ボディ・ミュージックにしてジャンク!プッシー・ガロア、ミッシング・ファウンデーションとニッツアー・エブ、リヴォルテイング・コックスが好きな向きにはお薦めしたい一枚。