Skullflower - Form Destroyer

Kino II: Form Destroyer

Kino II: Form Destroyer

Pure、Totalといったハーシュでハードコアなノイズ・インダストリアルを作っていたMatthew Bowerを中心としたインダストリアル系ロックバンドの1st。なお、このアルバムにはラムレーのGary Mundyが参加している。
端的に表すとノイズ・ロック。この時期(1980年代後半)の所謂「ジャンク」と呼ばれていたバンド達の影響が見れるけど、この圧倒的なだらしない感じはどういうことなのだろう?って趣。こいつら全員、アルコールとかアシッドとか入れて録音してるだろ、という感想しか浮かんでこない。
サイケデリック、アシッドとかのワードも浮かんでくるけど、ヒッピーイズムの対極にある「ヘイト&ウォー」のパンクイズムが多分にあり(それはやっぱりラムレーのメンバーがいるからだろうか)、それを鑑みると「只のだらしなさ」が浮き彫りになって来てヤバい。
酔ったノイバウテン、ゼヴという趣のインダストリアル・ドローン。殺伐さが根にあるが、それを上回るゆるふわなノイズ・ドローンに浸れる好盤。

Tommi Stumpff - Terror II

Terror II [Analog]

Terror II [Analog]

ドイツはデュッセルドルフを拠点として活動していたパンクバンド、 Der KFCのメンバーによるソロアルバム二作目。
DAFリエゾン、ベルフェゴーレなどなど後にEBMの基礎となったジャーマン・ニューウェイヴから諸国ニューウェイヴバンドのPちゃんを担当していたコニー・プランクをこれまたPに迎えて幾つかの音源を出していたのが1980年代初頭。それっきり音沙汰が無かったトミー・シュタンプが1980年代末期になって復活。そしてこのアルバムはその復活一作目。しかしながら、コニー・プランクの名は無い(1987年に他界)。
このアルバムは仕切り直し……というべきもので、過去のフィータスを思い起こさせるキチガイテンションは希薄で、どちらかと言えばライバッハやボルゲイジアにニッツアー・エブを足した様な全体主義を感じる直線的なエレクトロニック・ボディ・ミュージック
当時(1988年)某音楽雑誌がこのアルバムのレビューに「デジタル・ワグナー」と書いたそうだが、前述したようにライバッハを感じる扇情的なオーケストレーションがニッツアー・エブ的なエレクトロ・ボディ・ビートに乗っかる様はそのデジタルなワグナーを喚起せずにはいられないだろう。
当時のEBMシーンに対する返答か?と思わせる様なアルバム。ミニストリー、リヴォルティング・コックス、ニッツアー・エブ、ライバッハ……当時のシーンの役者たちが浮かんでくるのと同時に古のノイエ・ドイチェ・ヴェレも浮かぶ全き稀有なアルバムだろう。お薦め。
ちなみにデジタル・リマスターでアマゾン表記ではLPになってるがCDです。

2017年良かったCD(その2)

続き。順不同。2は今年に限りません。

Brutalsim

Brutalsim

UKのインダストリアル・ロック系バンドのベスト盤。ツイで某人様が上げておられていたの見て買いました。
1990年代に「Metal-Hacking Industrialism」という身震いが来てしまう程素晴らしい座右の銘を持つ「Dynamica」というレーベルがあって、このバンドはそこから出してました。
ディー・クルップス直系の熱きインダストリアル・メタルが満載かつ音質が格段に良くなってて、クソ満足!キェェェェェェーーーーーイッッッッ!!!!
Hell Yeah

Hell Yeah

http://moistly.hatenablog.com/entry/2017/09/23/193640
Ja,Nein,Vielleicht kommt sehr gut [12 inch Analog]

Ja,Nein,Vielleicht kommt sehr gut [12 inch Analog]

http://moistly.hatenablog.com/entry/2017/03/11/194000
Stowaway

Stowaway

UKのテクノ系Pの1st。
1980年代後半のテスト・デプトをハード・テクノまたはミニマルで実践したらこうなった……という感じでしょうかね。
最初から最後まで漢気溢れる、ウルトラ硬派なインダストリアル・テクノ!これを出している「Perc Trax」というレーベルも同じような音を出しているので要チェックやで!
fallondeafears.bandcamp.com
邦人ハーシュ・ノイズ系トラッカーによる同人ゲーム「東方Project」をモチーフとしたアルバム。
その「東方Project」というのは全くの門外漢で「中国人っぽい服装にゴシックをミクスチャーした服装の美少女キャラで怒首領蜂」という認識しか持ち合わせていないのですが、良いアルバムです。
基本的にはハーシュでメタル・ジャンクなのですが、時折挟まってくるゲームっぽいメロディ(これがその「東方Project」なのだろうか)が良いアクセント……というかめちゃくちゃキてて、μ-ziqを思い出しました。
ノイバウテンμ-ziqが共作したらこうなるかも……と思いました。
DINNER FUR 2 [LP] [12 inch Analog]

DINNER FUR 2 [LP] [12 inch Analog]

トミー・シュタンプと同じく所謂NDW。あとデジタル・リマスタ盤。だけどコニー・プランクのソロやクラスター、メビウスの音源を出していたレーベルからとのことなので、同時代のそれとは違う趣がありますね。
端的に表すとレゲエ、ダヴでしょうか。しかも後のベーシック・チャンネルなんかを思い起こさせる硬質で空間系のそれ。一聴きしただけではとてもレゲエには聴こえないのだけど、じわじわダヴがキます。
この時代(1982年)でこういうことを出していた人達が居たことに驚きますが、独語シャウトや反復する硬いシンセ・ベースにDAFの影響や当時既に空間系のレゲエやダヴを作っていた坂本龍一の「B2-Unit」の影響もビシバシ感じます。

今年はホントに新譜を買っていなくて(それどころか旧譜も)書くことないなぁと思ってたのだが、他ブログのベストエントリを読んで、ああ、そういえば少しは買ってたなと思いだし、なんとか書き上げた次第。
想えばガンプラとかアニメのグッズばっかり買ってた一年で音源に割くリソースが不足。それは今でも絶賛継続中なので、このブログの更新頻度は更に減少していくことでしょう!それでは酒でも飲みながらアニメを観るかな!

2017年良かったCD(その1)

順不同

ALSO SPRACH ZARATHUSTR

ALSO SPRACH ZARATHUSTR

http://moistly.hatenablog.com/entry/2017/10/07/200640
POST SELF (ポスト・セルフ: +3 bonus tracks)

POST SELF (ポスト・セルフ: +3 bonus tracks)

ナパーム・デスジャスティンとFall Of Becauseというノイズ・インダストリアルバンドにいたG.C.グリーンからなるインダストリアル系メタルバンドの8th。
一聴した時はイェスーのアルバムかと思った位にキラキラ、哀愁してますね。時折ベースをブーストさせてくるところはJKフレッシュっぽいです。新たな一手を繰り出してきました。
Zu Spaet Ihr Scheisser

Zu Spaet Ihr Scheisser

パンク系のバンドに居た人のソロプロジェクトの1st。
所謂ノイエ・ドイチェ・ヴェレというやつですが、DAF路線のコニー・プランク仕事によりプレEBMに仕上がってます。元パンクの人がやっている、というのもEBM化に拍車をかけているのかもしれないですね。初期ディー・クルップスやDAFが好きな人は買いだと思います。
f:id:moistly:20180102203845j:plain:h170
Various – Ex Yu Electronica VI
ユーゴスラヴィア時代の電子音楽をまとめたコンピの第四弾目。とはいってもこのコンピ以外は持ってません……というか手に入らない……。
この国には一番目に挙げたライバッハの他にもボルゲイジア、コプティック・レイン(と読むのかな)などなどEBM、インダストリアル系のメタルバンドがいたりするけど、このコンピに入ってる曲たちは前述したバンド達に輪をかけて可笑しな音ばかりで圧巻です。YouTubeで旧ユーゴや東独(つまるところ旧共産圏)のインダストリアルやニューウェイヴ、EBMなんかを上げているアカウントがいたりするけど、その音にグッとくる人は買った方が良いです。
まだまだ世界には変な音楽が沢山ありますね。
Concrete Desert [輸入盤CD / DLコード] (ZENCD239)_431

Concrete Desert [輸入盤CD / DLコード] (ZENCD239)_431

テクノ・アニマルなるダヴステップの先駆的なユニットでゴッドフレッシュのジャスティンとともに組んでたケヴィン・マーティンのプロジェクトで今作はドローン、ドゥーム系のバンドEarthとのコラボアルバム。
ドローン系の音は全然聴いたことが無くて、的の外れたことしか書けないのだけど、ポスト・ロックとダヴステップの融合みたいな感じを受けました。The Haxan Cloakが参加していたThe Bodyの「I Shall Die Here」からデス・ヴォイスを抜いた感じとも受けますね。なのでデス・グリップが参加していたアルバム「Angels & Devils」みたいなテクノ・アニマル再びな激烈ダヴステップは皆無です。悪しからず……。
(一旦ここまで。その2に続く)

Adriano Canzian - Pornography

Pornography (Dig)

Pornography (Dig)

イタリアのエレクトロ、テクノ、EBM系アーティストの1st。
イタロのエレクトロニック・ボディ・ミュージックといえば真っ先に挙がるのがパンコウ。しかし、このお方が奏でるそれはパンコウの素朴でちょっぴりゴシックなエレボとは大きく異なっている。
このアルバムが出たのは2005年。当時はオルタ―・イーゴの「Rocker」を端とするハードでアシッドなエレクトロが全盛だった。その流れを汲むアーティストやバンドも出始めていた頃だった。ジャスティスやデジタリズムなんかだろうか。明らかに1980年代のエレクトロとは違っている「エレクトロ」が浸透し始めていた頃だった。
しかしながら、その所謂黒人のプレヒップ・ホップこと「エレクトロ」とは違っていたそれは源を探っていくと、エレクトロニック・ボディ・ミュージックに行きつくように聴こえる。この2000年代半ばにはハード・エレクトロを体現する「エレクトロ・パンク」と呼ばれていたジャンルも同時に生まれていた。同ジャンルを表わすコンピ「エレクトロ・パンク」に収録されていたブラック・ストロボの曲を聴いてみると、EBMの影響が明らかになると思う。アシッド、ハード・ミニマル、トランスを通過したフロント242やニッツアー・エブが鳴っていた。
このアルバムも全くそれで、ハード・アシッドを通過したEBMだ。オルタ―・イーゴが開発したハード・エレクトロがニッツアー・エブと見事に融合。またクレジットに書かれた(彼が)尊敬するものにキュアー、スージー&ザ・バンシ―ズなどが並び、その所為かゴシック、ダークウェイヴのりも加味されている。
ハード・アシッド・エレクトロとエレクトロニック・ボディ・ミュージックが交差するとき……。意外とディスク・ユニオンのクラブ・ミュージック館で一枚数百円という投げ売り棚で見つけることが出来るので興味を持たれた向きは如何か?

Ron Morelli - A Gathering Together

A Gathering Together

A Gathering Together

アメリカはニューヨークの「L.I.E.S.」というかなりアウトサイダーなテクノやハウスを出しているレーベルの長の3rdアルバム。
最近のテクノやハウスの動向はさっぱりになってしまったので前述した「L.I.E.S.」というレーベルは全く知らないが、ネットに散在する情報を見るに、ゴス、インダストリアルよりなテクノも出しているよう。こういう新興勢力はチェックしとかないといけないですな。
しかし、このアルバムはPrurient他で漆黒メタル・ジャンクを出しているDominick Fernow主宰のHospital Productionsから出している。という訳でお察しの通りの音。初期から1980年代前半までのM.B.を魅せつつ、そしてそれをテクノと融合させようとしているのが伺える。それはDominick Fernowも同様の手法を使っているが、このアーティストはシカゴ・アシッドやハード・テクノのフォーマットでインダストリアルを実践しようとしている。しかもラフかつダークなシカゴ・アシッドだ。その今までにない音像は圧巻。
バム・バムを思い起こさせるダークかつ絶望感溢れるシカゴ・アシッドとイタロ・インダストリアルの雄ことマウリツィオ・ビアンキが交差するとき……。ちょうお薦め。要チェックやで!

Godflesh - A World Lit Only By Fire

A World Lit Only By Fire

A World Lit Only By Fire

イギリスのインダストリアル系メタルバンドの7th。
来月の半ばに新譜が出るというので、買った当時はあんまり良いとはいえず、数回聴いて積んでいたこのアルバムを先日、久しぶりに聴いてみたら、思いの外良かったので紹介してみたい。
本アルバムは2001年に出た「Hymns」以来でその間は13年だ。何故、それだけの年数が空いてしまったのかは知らないが、その間にも様々な名義(JKフレッシュ、イェスーなどなど)での音源をジャステインは出していたので、空いている感じは受けない。
そして、このアルバムはその13年間で行っていた各々のプロジェクトからの経験値を反映しているのかと、訊かれれば、全く無いと答えたくなるようなアルバム。(比較してもしょうがないが)前作「Hymns」は生ドラムをフィーチャーしてギター・リフやベースラインの重さよりもビートの重さに力を置いていた、彼らの今までの作風からすると異色な音になっていた。その前作が無かったかのような、冷徹なマシーン・ビートの上を荒涼、退廃としたシーケンスが流れていく、初期から1990年代半ばまでのゴッドフレッシュ。一番近いのは「Selfless」だろうか。
時に覚醒するが全体的にはヘヴィでドローンなインダストリアル・メタルが揺蕩う。倦怠感を伴う微睡をハンマービートな打ち込みが斬り込み、それがアルバム全体の良いアクセントになっている。
まだ、新譜の音源は一曲も聴いてはいないが彼らのことだ、また大きく裏切ってくることは間違いなしだ。しかし、その前にこのドローン・インダストリアル・メタルを聴いてみては如何か?