Front Line Assembly - Tactical Neural Implant
- アーティスト: Front Line Assembly
- 出版社/メーカー: Roadrunner Records
- 発売日: 1992/04/28
- メディア: CD
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初期はキャバレー・ヴォルテールやポーション・コントロールを思い起こさせる、ひんやりとして暗いエレボだった彼ら。……だけど、どうにもその眷属から抜け出せない感があり、加えてそれら(キャバレー・ヴォルテールやポーション・コントロール)を水で薄めたような音源が目立ち、クオリティが低かったように思える。しかし、5th「Caustic Grip」前後から、飛躍的な進歩を遂げることが出来、一躍シーンのトップに躍り出た。ちょうどシーンが沈静化かつ衰退していた頃なので、彼らの活躍は当時大いに皆を奮い立たせたことは想像に難くない。その飛躍的な進歩はこの作品にも聴くことが出来るだろう、と当時の聴衆たちは思ったのかもしれないが、どうもそうもいかなかったよう。
この作品は前作からスピードとメタルっぽさを抜いたもの。ミドルテンポの曲が大半かつ前作よりもエレクトロニックになっている。これは当時欧州で台頭していたトランスの影響かもしれない。ダークでゴシカルかつ哀愁のあるメロディラインはハートハウスやスーパースティション、そしてMFSから出て来るような所謂ジャーマン・トランスに酷似している。そこに彼ら独自のサイバーパンクなエレボが加味された感じ。アルバムの大半の曲が四つ打ちなのもそれを思わせる。この作品が当時、日本では「ハードコアテクノ」として売られていたそうだが……。まだトランスというジャンルが一般的ではなかったのだろうか。
前作のノリを期待する向きを裏切る内容になっていて、お薦め出来ないが、それを全て忘れて聴けば、トランス、エレボの狭間を感じる稀有な作品であったことは間違いないと個人的に思う。