Ministry - Toronto 1986

Toronto 1986

Toronto 1986

米国のインダストリアル/EBM系バンドの1986年カナダのオンタリオ州トロントで行われたライヴを収録した盤。
まだ2ndを発表したばかりで持ち曲も少ないけど、この盤の面白いところがミニストリーの貴重なEBM期を収めたものであることは間違いないだろう。ブート盤では腐るほど出ているが公式では初めて。3rdからスラッシュ・ギターを取り入れてインダストリアル・メタルと化するのだから。なのでノー・ギター、フルエレクトロニック……とまでは行かないが弦奏者はベースのアルさんのみ。ドラムのクレジットがあるが音からしてシンセ・ドラムだろう。
冒頭からメタル・パーカッションとエレクトロ・ハンマー・ビートの上をニューロマンティクス時代が残る湿り気があって怪しげなシンセ・メロディにベース・ラインが流れて、アルさんが吠える。後のギタリストが三人もいてドラマーが二人もいるライヴ編成から鳴る音よりも驚くほどにシンプルな音。しかし、キャバレー・ヴォルテールやテスト・デプトにも通じるひんやりとした質感やファンキーかつダンサブルな展開はこのバンドが当時、UKのノイズ・インダストリアルからのビート・インダストリアルを志向していたのが解るだろう。微妙にもベルギーのニュービートとも通じる音だ。
また頃にはアルさんはリヴォルティング・コックスなるバンドも結成して1stを出しており、そこからの曲も入っている。だからだろうか同時期のリヴコのライヴ盤ともリンクする。が、リヴコはパーティーのりが強く、本エントリで紹介するライヴ盤はパンクの縦ノリが多く、やはりハードロックをシーケンスを基礎とする「エレクトロニック・ボディ・ミュージック」がこの頃のミニストリーを表わしていて面白い。
後のインダストリアル・メタルを期待する向きには資料程度の価値しか持てないと思うが、キャバレー・ヴォルテール、テスト・デプトなんかのビート・インダストリアルやフロント242のEBMが好きな向きにはお薦めしたいライヴ盤。