2019年良かったアルバムとかEP(その一)

2017年ぶりにベスト盤エントリを書きます。というのも2019年はそれなりに新譜を買っていてかつその内容が良かったためです。
・Test Dept - Disturbance

Disturbance

Disturbance

  • アーティスト:Test Dept
  • 出版社/メーカー: One Little Indian
  • 発売日: 2019/03/01
  • メディア: CD
UKのメタル・ジャンクグループの(多分)12枚目となるアルバム。20年ぶりの新譜です!
このグループの1980年代はノイバウテンSPKの流れを汲む金属殴打音楽を奏でていたのですが、次第にケルト音楽に傾倒し、更にはテクノやトランス方面まで歩を進めてました。
20年ぶりのアルバムはその流れを忘れてしまったのかのようにフロント242やニッツアー・エブを思い起こさせるような「エレクトロニック・ボディ・ミュージック」になってました。
調べていないので彼らがどういうことでこのオールドスクールEBMに辿り着いたのかは存じませんが、1986年発表の「The Unacceptable Face Of Freedom」までの彼らが持っていた強迫的なインダストリアル・ビート、メタル・パーカッションも復活していて、単なるオールドスクールEBMで終わらないのは流石の出来!

・Drab Majesty - Modern Mirror
Modern Mirror (Transparent Red Vinyl)

Modern Mirror (Transparent Red Vinyl)

  • アーティスト:Drab Majesty
  • 出版社/メーカー: Dais
  • メディア: LP Record
アメリカのダークウェイヴ系デュオの3rd。Deb DeMureなる人物のソロ・プロジェクトとのことですが、両性具有で別人格なるAndrew Clincoというロスアンゼルスを拠点としたミュージシャンでもあるそーです。
そういう1980年代のニューウェイヴ系のバンドっぽい設定の趣から解るように、キュアー、デペッシュ・モード、ザイモックスとかの4ADもの、シスターズ・オブ・マーシー、サザン・デス・カルト、ダンス・ソサエティ等々の耽美でゴシックかつダークな音像が満載。1980年代のフールズ・メイト誌が推していたようなバンドの音楽といえば解る人には解ると思います。エレクトロニック・ビートの上をリバーブが効いた深きギターと耽美で哀愁の効いたシンセとヴォーカルが疾走していく……。
今年の後半はこの手の音楽をネット(YouTube)に積極的に上げているアカウントも手伝って個人的に大ヒットしていて、新譜から再発ものまで聴き漁ってました。それは今もなんだけど(先日もダンス・ソサエティの2nd(再発)を御茶ノ水のユニオンで発見して購入した)。
またこのアルバムを出した「Dais Records」も1980年代的な暗黒耽美音楽を多く輩出したりしているので要チェックやで!

VR Sex - Human Traffic Jam
http://moistly.hatenablog.com/entry/2019/09/16/192751を参照。
・KMFDM - Paradise
Paradise

Paradise

  • アーティスト:Kmfdm
  • 出版社/メーカー: Mvd
  • 発売日: 2019/10/11
  • メディア: CD
ドイツのインダストリアル系メタルバンドの19th。
相変わらずの打ち込みビシバシ、スラッシュ・ギターが雨あられの疾走感のあるダンシンなメタルサウンドメタラーからは「テクノじゃん!」、テクノヘッズからは「メタルじゃん!」と超絶な拒否反応をされるような音源が横溢してますが、冒頭のラップコアを取り込んだ曲や後半のオールドスクールEBMものは新鮮でイイです。北の将軍さまと米国の大統領のツーショットが映ったり、世界の紛争が流れていく全然パラダイスではないバッド・テイストなMV「Paradise」は必見!2003年に大量破壊兵器が無いのにも関わらずイラクに侵攻していた米国を揶揄するかのようなアルバムタイトル「WWⅢ」をリリース(ジハドという曲も入っている)していた彼&彼女らの皮肉さとポリティカルさは健在のようです。

・Ansome - Hounds Of The Harbour
Hounds Of The Harbour

Hounds Of The Harbour

  • 発売日: 2019/11/15
  • メディア: MP3 ダウンロード
UKのテクノ系Pの2nd。
PercなるUKのロンドンを拠点とするハードコアなインダストリアル・テクノを量産している(なんとあのノイバウテンのリミックスまで手掛けている)Pちゃん主宰のレーベルから、というのが物語るようにこのアルバムもまたハードなインダステクノがぎっしり詰まっている。しかし、このアーティストのそれはEBM寄りで、一昔前のテレンス・フィクスマーのような音だったりする。あとは2000年代前半でシュランツ一歩手前のドイツやスウェーデンノルウェー辺りのハードなミニマルテクノも思い出したりしました。
漢気溢れるテクノ・ボディ・ミュージックです!押忍!